「漫画おすすめランキング」や「このマンガがおもしろい10選」など、漫画情報に飽き飽きしていませんか?
それもそのはず。メディアでは、売れ筋や話題性のある作品が扱われやすいからです。退屈な漫画を紹介して売れなかったり、教えたことで信用を失う恐れもありますから。
こうなると必然的に人気作ばかりが紹介され、似たような紹介結果になるという悪循環に・・。僕も面白いと思ってる漫画は、やっぱり他の人とそんなに変わらない傾向があります(苦笑)
しかし当ブログは、どんな漫画であろうとカタログ的に紹介することにも力を入れます。
なぜなら、世間に評価されずとも、一部ではウケる作品が多くあることを漫画オタクの僕が知っているから。そのため本記事では、作品評価に関係なく、管理人の僕が読んだ漫画をひたすらレビューしています。
この記事がおすすめな方
- 売れ筋や年代は気にしないので、知らない漫画があるなら紹介して欲しい
- どんな漫画でも、管理人が読んだ感想やレビューを知りたい
僕が「過去に読んだ漫画」というだけで紹介するので、漫画探しの参考にお使いくださいませ。
※一気には書けないので、1000作まで随時更新しながら続けます。まだまだ途中ですが予めご了承ください。
「あ行」の漫画
浅野いにお短編集 ばけものれっちゃん/きのこたけのこ 浅野いにお
3行でわかるストーリー
- 浅野いにおの短編集
- ショートストーリー全13編を収録
- 現実社会から近未来、SF系まで幅広い内容
気に入ったのは、ふんわり男だ。恋心を秘めた男女それぞれの思いを、視点を変えて表現している作品。同じ絵を繰り返し使っているので、楽したいのかなという目でも見れるけど。
でも全くそうは受け止められなくて。むしろ、男女の駆け引きをこんな形で表現できるなんてさすが。こう思わされてしまうほどよく出来ていた。短編の内、ふんわり男に3話使ってるからね(笑)
ただし、すべての短編が面白いわけではなかった。現実や近未来、SFチックなどテーマすべてが好きという読者もそうはいないだろう。僕としては、現実や近未来の作品が良かったと思う。
あそこではたらくムスブさん モリタイシ
3行でわかるストーリー
- コンドーム研究開発で働く主人公とヒロイン・結さんのラブコメ漫画
- 開発過程を真面目に描きつつ、ドタバタな日常を取り込んでいる
- 結さんの仕事熱心ぶりによって、下ネタ色を薄くしている
製造現場を再現していることが伺える作品。実際に、新製品の開発におけるアイデア出し。製造過程の中で、機械に触れるなどリアリティのあるネタが出てくる。
仕事として働く以上、いちいち気にしていたら仕方がないというのも分かる。その証拠に、結さんは真面目にコンドームについて話すし、恥ずかしげもなく新入社員の主人公に話しかけている。
読む前は、もう少し下ネタギャグ漫画に寄せているかなと考えていたが、そこまでおかしい話はない。主人公視点で、結さんの真面目ぶりとやっている仕事の温度差を楽しむ作品。
当て屋の椿 川下寛次
3行でわかるストーリー
- 江戸を舞台とした推理ミステリー作品
- 何でも探し当てる「当て屋」である椿が主人公
- 春画絵師が巻き込まれる事件を解決することで2人の物語が始まる
推理系の漫画ではあるが、舞台が江戸と少し珍しい作品。時代背景をしっかり意識しているため、読んでいて飽きさせない。当て屋とはいわゆる現代の探偵と言ったところ。
時代が違うだけで、推理して犯人を当てることに変わりはないので、推理ミステリー好きなら楽しめる。ただし、エロ描写が多いので好みは分かれるかと。グロも入ってくるため敬遠されがち(汗)
絵は相当に上手いので、僕としてはお気に入りの漫画。ただ可愛いエロいといった、物語のメインとなる推理と違った部分で目立つのも確か。画力が高すぎるのも罪である(笑)
アホガール ヒロユキ
3行でわかるストーリー
- 主人公の花畑よしこは超絶なトンチンカン
- あまりにもぶっ飛んでいるため周りからツッコミを受け続ける日々
- アホすぎることを行い続けるギャグ漫画
初期は4コマ作品で、途中から雑誌の移籍事情も絡んで1話完結スタイルとなった。個人的に初期の4コマの段階で面白かったのだけど、おすすめや好みでいうと後期の1話完結バージョン(7巻以降)。
この作品は、いい意味で落ち着けない(笑)アホガールというタイトルは、主人公のヒロインだけを指しておらず、全体的に女の子がバカということが関係している。
面白いところは、アホらしいネタをとにかく生み出してくること。この手の作品は、出オチさせるくらいのテンションで攻めないと成立しないので、よく12巻までやったなと関心した。
雨宮鬱子の証券会社で働いたらひどい目にあった 雨宮鬱子
3行でわかるストーリー
- 証券会社に入社してから起こったことを描くノンフィクション作品
- パワハラなどによるブラック労働現場でウツになったことを振り返る
- 鬱症状について、仕事内容について、これからについての3段構成
「どこでもある」と言ってしまえば終わりだが、ブラック企業内で起こるパワハラによって、作者がウツになったエピソード。愚痴というか、会社への怨念が序盤から伝わってくる(汗)
証券会社の実情に触れているが、ネット証券で手数料を安く運用することが鉄則の現代。会社を構えて、従業員を雇うなら胡散臭い金融商品を販売しているのは当たり前と言えば当たり前だ。だからと言って悪質営業が許されるわけでもないが。
投資をやるなら正しい知識を持ち、人から勧められるものにはハズレしか無いことを知るにはいいかも。実録体験として出しているので、絵については目をつぶるべし。
アラサーちゃん/無修正 峰なゆか
3行でわかるストーリー
- 主人公はアラサーちゃん。その他、数人のキャラと共に恋愛あるあるを描く
- 可愛い絵とテンポの良さが売りの4コマ漫画
- 下品なネタなども取り入れHでクスっと笑える作品
作者である峰なゆか自身の考察力がすごい。男女関係の話から、男同士に女同士。なぜ作者は女性であるにも関わらず、男性の視点をここまで上手く扱えるのか関心させられる。
好き嫌いもあると思うが、イラストがとても可愛く描かれている。ちょっとそのネタは下品では?という内容も、絵のタッチが可愛いので、無駄にいやらしくない雰囲気。
モテ層の話を扱っているため、非モテの人ほど「こんな人たちがいるの?」と思えてきたり。でも読んでいると、何だかあるあるなんだよなーという気にさせられる。ついつい読み進めてしまう4コマ作品。
#アルファベット乳の、オモテとウラ。 山科ティナ
3行でわかるストーリー
- A~Hまで順に各カップの女子あるある、胸キュンストーリー
- WEBでバズった#アルファベット乳シリーズ完全版
- 作者によるバズの裏側を実録エッセイで漫画化
釣られたーwというのが、男性としての感想。女性の場合は、違う感想を持つのだろう。ちなみになぜバズったのかは、読んでいても分からなかった。それだけタイトルと内容に開きがある。
どちらかというと、作者自身の成功までのストーリーとか。何者かになりたい自分語りが中心で、タイトル買いすると期待はずれに終わりそう。ただクリエイター女性などには共感を得る部分もあるのではないかな。
作者とライバル女性の戦いみたいなところが、強くフォーカスされすぎている。アラフォーのおっさんとして読むのは場違いだったようだ。試し読みは必須になる。
1122(いいふうふ) 渡辺ペコ
3行でわかるストーリー
- 結婚7年目の仲良し夫婦だがセックスレス
- 生活維持のため夫が外で恋愛する(妻公認の不倫)
- しかし夫婦ともにいろんな心境の変化が起こる
ことの発端は、夫が妻に相手にされなくなったという一般的によくある話。その問題をどうするかは家庭によるが、妻公認の不倫OKが作中のテーマになっている。
読んでいる限りでは面白いし、アリといえばアリなのだろうけど。僕個人の感覚で言うなら、逆に許可なんてされてたら怖い・・。実際、作中では許可されてるけどトラブルが起こっているし。
夫婦仲が壊れないように始まった不倫だけど、妻の方も動き始めたりと読み応えがある。まあ、妻まで動き始めるならさっさと不倫NGにして夫婦関係を修復しなさいよという話だが・・。
イジメの時間 くにろう
3行でわかるストーリー
- イジメ当事者と加害者によるストーリー
- 精神的に追い詰められていく過程が描かれている
- 生育環境なども含めたイジメが起こる構造にも触れていく
かなり怖い漫画になっている。イジメを受ける天童は、ありがちだけどおとなしくて優しい子。彼は標的にされがちで、典型的な被害者タイプ。正直、自分も彼と重なる部分があるので辛かった。
本作はイジメが題材だけに、加害者側の雰囲気がすごく出ていて。リアリティがあり、こういう人間が、学校でイジメをやっているんだよなということがすぐに伝わる。教材として学校で配ればいいのにとさえ思う。
イジメは絶対に加害者が悪い。これは事実なのだけど、加害者もまた育った環境が悪かったりするんだということまで描いている。加害者を養護する気は無いが、よく描いていることは間違いない。
いちご100% 河下水希
3行でわかるストーリー
- 中学3年の真中淳平を中心とする美女たちとの学園ラブコメ
- 真中の前に、いちごパンツの美少女・東城綾が現れ心奪われる
- しかし「いちごパンツの美少女」と勘違いして、西野つかさに告白してしまう真中・・
登場人物の女の子たちが可愛く、その女子たちに都合よくどんどん好かれて行くという王道ラブコメを展開している。ヒロインが多く、サブヒロインでもかなり可愛いのでファンも多いはず。
女子たちが真中を巡って苦悩する様子が多いのだけど、すべては真中が悪い。最初に告白した西野つかさにOKをもらうのだけど、いちごパンツじゃないと気づいて東城も気になり始めたり・・。贅沢すぎるw
「パンツを履いていたかどうか」が真中の中ではスタートラインなのが面白く、今になって考えると理解できない部分もある。中学生だし夢や幻想が、いちごパンツに込められているんだろうなぁ・・と今は解釈している(笑)
いつも美空
3行でわかるストーリー
- 13歳の誕生日に超能力を授かる少年少女(6人+1匹)たち
- 超能力を活かし助っ人としてレンタルクラブ(部員派遣)を開始
- ジャンルは学園&SF漫画となる
「超能力を使える学生」というだけで、あだち充の新境地かと思ったのだけど。やはりスポーツ&ラブコメでないと、あだち充の良さは活きない。かなりストーリーが中途半端の迷作。
序盤はいい。それこそ3巻くらいまでは、超能力を駆使しつつ、それでいて主人公・美空のモノマネ力が光り輝く展開で悪くない。「女優になるかもしれない」という伏線に沿った内容もそこまで悪くない。
それがアイタタタ・・。賛否両論はあるだろうけど、5巻で展開は大きく変わる。詰め込みすぎという感じ。女優になる、超能力は使う、さらにストーリーに深みをもたせる・・のは厳しかった。なぜこうなったか真相を知りたい(汗)
インベスターZ 三田紀房
3行でわかるストーリー
- 投資を題材にした漫画
- 主人公の財前孝史は、学校の運営資金を稼ぐ投資部に入る
- 投資を通じて社会のことや資産のことを学んでいく
「投資」と聞くだけでギャンブルだと思ってしまう人もいると思うが、しっかりと学んで行けば社会を良くするために必要な経済活動だということが理解できる。
ちょうど投資に興味があるけど、何から知れば良いのか分からないという方には教材にもなる。今は国も投資を推奨するほどなので、まずは漫画から読み始めるのもいいだろう。
個人的には、投資を幅広い概念で見通し、不動産などの領域にも触れていたのは良かったと思う。財前も最初は投資シロートなので、心理的な迷いや焦りが初心者目線になっているので読みやすい。
ウイナーズサークルへようこそ 甲斐谷 忍
3行でわかるストーリー
- 漫画家になりたいがストーリーが苦手で挫折した主人公・山川
- 占い師に相談して行き着いたのは競馬場だった
- 馬券予想の集団「ウイナーズサークル」と出会う
タイトルから、競馬の漫画かと思いきや・・。いや、競馬漫画には変わらないのだけど、ストーリーは馬券を当てることに重きを置いて描かれている。いわゆる馬券勝負の話。
全く競馬を知らない山川が、どうやって当てていくのかという話だけど、漫画家を目指していたことで身についた能力が開花する。それは馬の過去の写真と、パドックでの今を見比べて、細かな変化を見るというもの。
いや、現実ではさすがに分からないよ!wという話になるのだけど、この能力を使って当てに行くことになる。絵はそこそこだが、ストーリーがよく面白かった。
海猿 佐藤秀峰
3行でわかるストーリー
- 新人海上保安官・仙崎大輔が主人公
- 海上での事故や犯罪などへの対処にリアリティがある
- 仲間との絆や、恋人との愛など人間関係についても感動
仙崎の成長を描きながら、同時に海難事故などのトラブルを解決するシーンに熱くなる。人間なので水に入ってしまえば息が出来ない。息が出来いない=死の緊迫感が作中では強い圧として読者に襲いかかる。
マンガなのは分かるのだけど、それだけ海上保安官たちの命をかける仕事ぶりが、現場目線で伝わってくるのが大きい。読者目線ではあるが、「なんとか助かってくれ」と何度願ったことか。
命がかかっているからこそ、絶対的な信頼感で仲間と仕事をしないといけないこと。また恋人といつ別れることになるか分からない死生観など、心がつままれる感覚になるリアリティ作品。
怨み屋本舗 栗原正尚
3行でわかるストーリー
- 怨みを抱く人間の依頼を受ける「怨み屋」
- 金銭と引き換えに復讐代行を行うストーリー
- 依頼があれば数々の手段で相手を追い詰める
「悪いやつには成敗!」という最後はスッキリする漫画。スッキリはするけど、復讐の内容は人それぞれ。いいぞもっとやれレベルから、それやり過ぎなのでは?という話まで様々。
とは言え、前提に悪いやつを成敗するので、特に胸糞悪さは残らない。被害者サイドが可哀想というエピソードから始まるため、感情的には応援したくなるのが本音だ。
レビューを読んでいると、現代の必殺仕事人という感想も見かけたりするが、ちょっと仕事人たちにしてはクセは強め(苦笑)ダサいというとアレなんだけど、仕事人ほどカッコいい感じでもない。
H2 あだち充
3行でわかるストーリー
- 野球部のない千川高校では「野球愛好会」が細々と活動していた
- そんな愛好会からスタートする主人公・国見比呂
- 比呂は故障で野球を諦めていたが実は誤診と判明。ライバル・橘英雄との対決を目指す
主要人物は4人。主人公はエースの国見比呂。そのライバルでスラッガーの橘英雄。比呂の幼馴染の雨宮ひかり。比呂の野球部マネージャー古賀春華。
比呂は一度野球を諦めているので、未練をなくすために野球部がない学校に入学。ここから甲子園を目指すというのだから、なかなかハードな話なのだけど。そこをドラマチックに描いている。
四角関係という恋愛模様や、甲子園に行ける野球部作りなど。青春盛りだくさんの仕上がり。普通に色々と予想しながら読んでいたが、終盤でとあるストーリーをぶっこむ展開を含めて本気で震えた名作。
おおきく振りかぶって ひぐちアサ
3行でわかるストーリー
- 西浦高校野球部が甲子園優勝を目指す物語
- 主人公は内気なピッチャー三橋。中学でイジメを受け自信喪失
- 入部する気はないが野球部を覗いていたところ女子監督に勧誘される
野球漫画と言えば、エースピッチャーや最強4番打者みたいな、ヒーローが主人公になりやすい。しかし本作は、気弱で自信がないという三橋が主人公。キャッチャー阿部と組むことで制球を活かす投球が評価され始める。
この作品は、そんな三橋を中心とした、人間関係を描いた野球漫画。珍しいのは、人の繋がりが密であることだ。普通の野球漫画も人を描くが、とにかく心理描写が細かい。
三橋の気弱さはもちろん、部員たちの些細な不安や混乱、葛藤も見事な仕上がりだった。そんな姿を見せられると、当然だが感情移入させられる。この漫画、ただの野球漫画だと思うなかれ。ドラマがある。
岡崎に捧ぐ 山本さほ
3行でわかるストーリー
- 作者がアマチュア時代に描きはじめた
- 幼少時代からの友人である岡崎さんへの結婚サプライズ用だった
- ネットにUPしたことで注目を浴びて書籍化
作者と友人である岡崎さんの、幼少期エピソードを描いているのだけど、これがとても懐かしさを感じさせる。僕も含め、90年代にテレビゲームに燃えた子供には熱い内容。
ネットでは「平成のちびまる子ちゃん」などとも言われたが、確かに子供時代に遊んだ思い出が読むほどに浮かんで来る。それだけピンポイントに90年代の子供あるあるを盛り込んでいるのだ。
絵のタッチは柔らかく、お世辞にもそんなに上手いと思わないのだけども。絵よりも、作者が伝えたい思いや、漫画に対する熱量とか。そういう技術云々を超えた物に感動させられた。
終わった漫画家 福満しげゆき
3行でわかるストーリー
- 10年前に初連載した作品が小ヒットした漫画家が主人公
- 地味な月刊誌でほそぼそと連載1本を続けていた
- そんな漫画家を踏み台にする二人のアシスタントが現れる
登場人物がみんな打算的で、その段階でもう面白い。売れない漫画家の主人公は、結婚目当てに女性アシスタントを入れたり。二人のアシスタント女性も、自分の利益優先でやってくる。どうなるのだという展開にしか思えない立ち上がり。
でもみんな打算的なことを隠し合うので、思惑がすれ違ったりと上手く行かず終始慌ただしい。もともと人間の腹黒さを描くのは上手い作者なので、ツボは抑えている。
「漫画家」がタイトルに入っているだけあって、漫画業界の話も多い。細かいネタではあるが、掲載についての決まりや編集とのやり取りも知ることができる。絵に抵抗がなければ誰でも楽しめる作品だ。
女の解体新書 シモダアサミ
3行でわかるストーリー
- 男性にはわからない女性のあるあるネタ
- 女性視点で描かれる恋愛模様がオムニバス形式で登場
- テーマは「女のありのまま」なので男女どちらも楽しめる
女性の感覚や考え方を知っている人には、そんなに斬新な話でもないというのが率直な感想。例えば冒頭のテーマで、上下違う下着をつけているから彼氏を拒むシーンとか。どこかで聞いたような話ではある。
また女性のヒミツとして、少年誌に描かれるようなヒロイン像を崩すような話も多い。トイレから出ても水に指先をつけて洗うだけとか、部屋でおならをブッとか(笑)
漫画の世界に出てくる女の子を信じている男性には衝撃かもしれない。身近にいる女性も本作に出てくるような人なのかも・・と思いながら読むのもいいのでは無いだろうか。
「か行」の漫画
かくかくしかじか 東村アキコ
3行でわかるストーリー
- 東村アキコが美大に入る前に通った美術教室での話
- 恩師となる日高先生とのエピソード
- 一人の漫画家の下積み時代エッセイ
クリエーターの原点なんて、よっぽどでないと誰も興味を持たないだろう。だけど東村アキコは違う。独特の感性や表現力で、ファンを増やしてきた売れっ子漫画家。自分もその一人だ。
そうなると、気になってしまうのが下積み時代。デビューまでどういった経緯で漫画を練習し、プロの舞台に上がったのか。そういった過程が分かることが楽しかった。
作品はというと、さすが破天荒な東村アキコの恩師だけあってインパクト抜群。ちょっと今の時代なら何らかの問題に触れるような・・そんな先生なのは読んでのお楽しみ。
カジカ 鳥山明
3行でわかるストーリー
- 幼き日に遊び半分で殺してしまったキツネの呪いを受けた主人公・カジカ
- 呪いを解くために生き物1000匹の命を救う旅をしている
- そんな中で出会った少女ハヤ。彼女がきっかけで竜の卵を狙う悪党と戦うことに・・
鳥山明の描く王道少年漫画はとにかく面白い。イラストも分かりやすく、誰が読んでもひと目で状況を把握させる力が卓越しているからだ。本作も同じく、ありがちな話を上手く仕上げている。
主人公がいて悪者がいて、合間にライバルやちょっと面白いクセキャラを出してきたり。そういう手順がワンパターン化してても、やっぱり面白いんだよね。
「悪玉」という人の心を悪にするものが作中に出てくる。これを上手く伏線として活用することで、善悪全ての人を救っている流れはさすがかなと。鳥山先生らしさはこういうところに出ているのだ。
KATSU! あだち充
3行でわかるストーリー
- 主人公・活樹はヒロイン・香月に近づくため彼女の父経営のボクシングジムへ入会
- 香月の両親は離婚しており、香月自身はボクシング嫌いだということが発覚
- しかし活樹を通して見えてくるボクシングセンスに気づき二人の物語が動き出す
漫画の内容はさておき。「隠れた名作」があるとするなら「未完の名作」が存在してもいいはず。その未完の名作こそ、本作のような漫画を指すのではないだろうか。それくらいハイクオリティ。(途中まで)
都合が重なっての打ち切りなんて言われているが、活樹の参謀役や、対戦が無いまま消えたライバル。このキャラたちを中途半端にしたままで終わったのは、あだち先生としても心残りではないのかなと。
そして一番伝えたいのは、中途半端と言いつつも80点の出来なこと。だからこそ、未完の名作と呼びたい。ふつう「未完だけど読んだ方がいいよ」なんて言わないからね。おすすめ漫画認定。
からかい上手の高木さん 山本崇一朗
3行でわかるストーリー
- 中学生男子の西片と、女子の高木さんのやりとりを描くラブコメ作
- 高木さんが西片をからかうことで、男子心を揺さぶる
- 1話完結のため読みやすい作風となっている
男子学生なら高木さんの「からかい」がとても嬉しい行為であることにすぐ気づく。というのも、西片は高木さんを意識しているため、からかわれても問題ないのだ。むしろありがたい!(笑)
「からかい上手」なところがポイントで、あの手この手で西片を揺さぶってくる。正直、好意を寄せている女子生徒に、高木さんの真似をされたら男はイチコロだ。もっと好きになるはず(笑)
ただ魔性と言うか、高木さんの男心の掌握術には年季を感じさせるものがある。もはや中学生女子ではなく、中身は中年女子ではないかと思えるくらい。思春期のトキメキ好きな方ならどなたでも。
監禁嬢 河野那歩也
3行でわかるストーリー
- 高校教師である主人公岩野が、ある日謎の女カコに監禁される
- 岩野は解放されるも、カコの策略で周囲を巻き込んでいくため苦悩にさらされる
- カコの正体を思い出すために岩野は奔走する
主人公は冒頭からいきなり監禁されており、読者はただならぬ雰囲気に引き込まれる。確か本作と出会ったのは試し読み。1話を読んだら次が気になって仕方がなくなり即購入。
サイコサスペンスとして怖いのだけど、その恐怖の元が「思い出せない記憶」だ。何とか思い出せよと主人公に言いたくなるが、恐怖煽りを含む伏線になっておりよく出来ている作品。
岩野と女性の間でおこるエロい表現を巧みに使っており、ストーリーにも適度に関係させているのが面白い。どんどん登場する女性キャラとのエピソードは必見。
偽装不倫 東村アキコ
3行でわかるストーリー
- 主人公の鐘子は独身30歳。頑張っても成果の出ない婚活に疲れていた
- 1人旅で韓国旅行に行く飛行機内でイケメン韓国人に出会う
- 独身コンプレックスから見栄を張り「既婚」と偽ったことから物語は始まる
鐘子は「既婚者」という嘘をついてしまったがために、徐々に「ジョーダンでした」が言えなくなる。なんと勿体無いことかと思うも、アラサー女性になると独身と思われることが嫌な気持ちもわからなくもない。
実際、自分はアラフォーになるがまだ独身なので・・(汗)例えば「お子さんは?」と、既婚前提で話しかけられたりすると、なかなかヒヤヒヤするので近い将来に既婚者面するかも(苦笑)
本作はベタベタな恋愛模様だったり、国をまたいだ話になるため現実味がない傾向にある。内容は薄いので、そこまで面白いかと言われると・・。偽装するというコンセプトのために、やや無理をしているのかな。
QあんどA あだち充
3行でわかるストーリー
- 主人公・庵堂厚は父の転勤で離れていた町に6年ぶりに戻ってきた
- 同時に事故で亡くなった兄・久(通称キューちゃん)が見えるようになる
- 幽霊ではあるが兄を意識しつつ、戻った町で懐かしい仲間との生活が始まる
けっこうムラのある作品で、不安定な序盤の立ち上がりに、ざっくりした終盤のまとめ方など、不評ポイントが目立つ。作者が序盤から「こんなので大丈夫か?」と自身にツッコミを入れているあたり微妙なスタートには気づいていたのだろう。
ヒロインである前沢遊歩と厚の関係性は好き。あだち充作品のお約束である、幼馴染同士の意識。お互いに気づいていない本心みたいなシチュエーションはしっかりしている。
ただ、幽霊がいることでリアリティ路線でこそ力を発揮するあだち作品の良さが薄れている。これを言ったらお締めえよという話だけど(汗)それでも兄や遊歩の想いが表現されるシーンは美しい。
銀河パトロール ジャコ 鳥山明
3行でわかるストーリー
- 地球にある小さな孤島で暮らす工学博士・大盛の元に不時着する宇宙人
- 宇宙人の正体はジャコ。自称エリートの銀河パトロール隊員だった
- ドラゴンボールの主人公・孫悟空の誕生秘話も収録
笑わせにきていると気づくと、自然とその面白さは半減するものだが、本作はシュールかつ緩急が効いていて楽しめた。話の端々に、鳥山節で語りかけるギャグがある。
主にはジャコなのだけど、その他にも似顔絵の雑さだったり。「オオモリ」の意味が、ジャコの星ではハナクソだったり。的確なヒットを飛ばす面白さに脱帽してしまう。
正直、ドラゴンボールのエピソードが読みたかったという購入動機を恥じたほど。しっかりした漫画だし、もし今後も「銀河パトロール ジャコ」のみで発売されても読みたい。
ぐらんば 押切蓮介
3行でわかるストーリー
- 主人公は山路八重(85歳)というおばあちゃん
- 先立った夫を殺した疑いをかけられ周囲に嫌がらせを受ける
- そんなある日、山で熊に襲われて転落する。落ちた先で目にしたのは・・
序盤の展開から、一気にファンタジーの世界に送られる流れは意味が分かりにくい。一時的にストーリーが意味不明になることや、展開を急ぎすぎている感は否めないところがある。
とはいえ、本作はテンポが良くないと成立しづらいところもあるので、正解といえば正解。バケモノが登場したときには何!?と思ったが、読み進めると納得する。
ただし壮大に練られた漫画ではないので、とにかく何も考えたくない。ただただババアが全力で敵をなぎ倒すシーンがみたいという心境の方以外は、まず試し読みすべき系統の作品。
クロスゲーム あだち充
3行でわかるストーリー
- 主人公の樹多村光と、その幼馴染である月島家の四姉妹の物語
- 高校野球を軸にした、コウと月島家次女の青葉における男女模様
- 野球のライバル、恋のライバルによって心が揺さぶられるストーリー
あだち充作品における最高傑作と読んでもおかしくないだろう。何がそこまで良いのかと言うと、コウから青葉に届ける想いの形だ。これは、ぜひ読んで欲しい名場面になる。
作中では、とにかく素直じゃないコウと青葉のやり取りになるが、これは仕方がなかった部分もある。お互いに亡くなった次女若葉のことが好きだったし、気持ちの切り替えなんてとても考えられるわけもなく。
お互いに身近で同じ時間を過ごす中で、少しずつ意識と共に気持ちの変化もあったのだ。天才バッターの登場や、恋のライバル出現などあだち作品として申し分がない。
結婚アフロ田中 のりつけ雅春
3行でわかるストーリー
- 「アフロ田中」シリーズにおけるナナコとの結婚編
- 結婚にまつわる男女の感覚差が面白く解説される
- 両親への挨拶から、結婚に向けて話が進むギャグ作品
ギャグ漫画と侮るなかれ。哲学や真理を説いており、結婚にまつわる教科書扱いしてもおかしくない出来栄え。僕自身、結婚に対する考え方を、この本から多く吸収した。(活用できているかは置いておいて・・)
主人公である田中と、お嫁さんであるナナコちゃんが結婚に向けて考えをぶつけ合うシーン。「あれ?女性のこういう感覚って理解できないぞ!?」という部分をギャグを含めて教えてくれる。
ギャグ漫画だが、この作品に限って言うと婚活漫画としても、良い教材になると思う(笑)周りのキャラも幸せになるために一生懸命なのも見どころ。
健康で文化的な最低限度の生活 柏木ハルコ
3行でわかるストーリー
- 役所に就職した主人公・義経えみるは福祉事務所生活課に配属される
- 生活課は生活保護などをメインとした職場
- 福祉制度や知識をもたない義経が、生活保護の現場で奮闘する
生活保護の受給者や申請者、またその周辺に関わってくる人々を描いている作品。生活困窮者を対象にしているため、読んでいて重たい気持ちになることも多い。リアリティ追求作なので仕方がないけれど。
読み進めていくと気づくのは、ただドラマ的に仕上げたいというだけのストーリーになっていない点だ。本当に必要とする人に対して、社会福祉の制度を伝えている。特に行政手続きは分かりにくいので参考に値するはず。
今の社会は失業者や病気、また災害などで昨日までごく普通の人だった方たちが、崩れてしまいかねない時代。セーフティネットの必要性や、啓発活動にもなる社会派作品として普及することを願う。
恋のツキ 新田章
3行でわかるストーリー
- 主人公のワコ(31歳)は、同棲している彼氏との結婚を考えていた
- しかしバイト先の映画館にやってきた高校生イコ(15歳)と仲良くなる
- 彼氏を捨て高校生との恋を選ぶ
惰性で付き合っていて、新しく好きな人ができる。そういった状況下になる人はいくらでもいると思うが、何しろ高校生が相手となると話は違う。
ワコにしてみれば、高校生彼氏の気持ちの移り変わりは怖いし、先を想像すると不安定要素しか見えなくて。でも恋をしてしまうと、人は止まらないんだろうなと思わされる漫画。これ男女逆なら問題になりそう(笑)
アラサーならではの焦りとか、恋人のすれ違いは上手く描いているため読み応えがある。一つ気になるのはラスト。打ち切りではないみたいだけど個人的な感覚では疑問。もっと他に方法があったと思うが・・。
コウノドリ 鈴ノ木ユウ
3行でわかるストーリー
- 妊婦や出産をテーマにした産科医療作品
- 主人公は産科医でありジャズピアニスト
- 命が生まれる現場における裏側がわかる
本作を読むまでは、出産にまつわる知識がほぼゼロだった。特に僕自身が男性なので、身近に考える機会がなかったのも大きい。しかし本作は、男性雑誌で連載されている。
結婚して子供を作る場合、男性も知識として分かっていても損はない。作品を通して、妊婦にはどういったトラブルが起こるのかや、家族としてどう関わるかを考える機会にもなる。
実際に現場取材している作品だけあって、時には悲しい結末も含まれている。勤務するキャラたちも個性的で、彼ら自身の人生も作中で反映されていてグッド。
聲の形 大今良時
3行でわかるストーリー
- 主人公・石田は仲間と共に聴覚障害の少女・宮西をイジメる
- しかし石田は主犯格として孤立。イジメを受ける側になってしまう
- 宮西は転向するが、石田は罪の意識を背負いながらも再開を果たす
イジメは許されるものではない。特に聴覚障害者というあからさまなハンデのある人を狙うのは卑怯。そんな気持ちになりつつ読み始めた。小学生とは言え、悪いことの線引はできるだろうに。
そんなことをやってしまった石田が、イジメられることになったのは当然の報い。そう思ったんだけど、宮西が優しくて。彼女が一番辛いのに、周りを救おうと一生懸命になる。
友情とか人情とか色々と描かれているけど、この漫画は宮西の立場で読むべき。そして、一人ひとりがイジメに対する認識を、もう一度考えるきっかけになればと思う。衝撃展開もあるので、心して読むべし。
殺し屋1 山本英夫
3行でわかるストーリー
- ヤクザである安生組の組長を殺すことから物語は始まる
- 殺しは「イチ」を擁するハグレ者グループたちによる計画だった
- 安正組の若頭である垣原が動くが次第にイチに対する期待が高まる
泣き虫なのに、めちゃめちゃ強い殺し屋イチ。殺しのスタイルは、ブーツに仕込まれた刃物で切り裂いてしまうこと。こういったスタイルなので、やっぱ気持ち悪い殺し方は出てくる。
またストーリーを追うだけで十分に面白いが、変態性癖な描写も少々あり。異常性愛者同士でイチと垣原は通ずるところがあったり、イチの仲間も怖い性癖があったり。これは読んでくれとしか言えない。
絵はヤクザ漫画でもあるので、胸糞に思うシーンもあるが、古いマンガにしては現代でも十分通用する。展開は予想していなかった流れに変わるしで、怪作と呼ぶに相応しい内容だ。
COWA! 鳥山明
3行でわかるストーリー
- おばけの間で流行る「おばけ風邪」を治す薬が必要になる
- 主人公・パイフーはおばけ仲間や、人間で元関取の活火山を連れ、薬を求め旅に出る
- 道中で起こるトラブルや仲間との友情を描くほっこりストーリー
過去の鳥山作品とは少しテイストが違うのが本作品。例えるなら"もしも鳥山明が絵本作家だったら・・"という企画を実現したような漫画。まさに絵本になっていてもおかしくない。
おばけ風邪を治すための薬を魔女に貰うために、おばけと人間たちが協力するストーリー。これだけで童話のような話にも聞こえるが、その内容の通りに進むから傑作だ。
しっかりとボスキャラを用意していたり、過度なバトル演出で決着させることもない落ち着いた進行が心を打つ。漫画を読んだのに、童心に返り楽しんだかのような読後感も良かった。
「さ行」の漫画
サイレーン 山崎紗也夏
3行でわかるストーリー
- 武蔵県警の機動捜査隊である猪熊夕貴と里見偲は恋人であり相棒
- 猪熊と里見がとある事情で出会うことになる橘カラ(正体不明)
- 捜査を行いながら真相を解明するサスペンス作品
7巻で終わってしまうのだけど、非常にスリリングかつスピーディーで刑事モノとしての出来は良い。ミステリアスな女である橘カラのキャラ立ちも光っている。
また猪熊と里見の「周りにバレてはいけない恋人関係」という設定にしているのは大きい。私情が絡むため、一緒に捜査ができなくなるようだ。実際は知らないけれど、おそらくそうなのだろう。
言うまでもないが事件モノなのでネタバレは回避して読むべき。とにかく動き回るので、足で仕事してる感が伝わってくる。ちょっと絵が微妙なところもあったりするが、ストーリーが良いので問題なし。
さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ 永田カビ
3行でわかるストーリー
- 作者自身の体験を元に、実際にレズ風俗に行ったレポを描いている
- と言っても、なぜレズ風俗に行くかまでの考えや様子を多く伝えている作品
- タイトルとは違いエロ描写は少なめ(無いに等しい)
ひとまず、エロいのかなと思って読むと、期待はずれに終わる。作者がメンタル的に落ち込み、彼女自身の社会復帰の一つとしてレズ風俗に行くことをレポした漫画。
終始、作者は追い込まれていて余裕がない。そこに至るまでには色々な理由があったが、両親などから認められず、親の縛りを強く描いている。これは毒親のような話と重なる。
何をしても満たされず、抱きしめられたいというささやかな幸せを求めている彼女。そこがレズ風俗という形だった。彼女の病んだ心理描写がエグいので、メンタルが疲れていない人向けとして紹介しておく。
ザ・ファブル 南勝久
3行でわかるストーリー
- 裏社会の組織に「ファブル」と呼ばれる1人の殺し屋がいた
- ファブルは正体を隠すため組織から平和に暮らせと指示を受ける
- 組織のボスと付き合いのあるヤクザ事務所で一般人として暮らすことになった
殺し屋ファブルの「ヤクザ組織に身を潜めてからの日常」がテーマ。しかしそこは伝説の殺し屋。要所で仕事をしてしまう。誰かを助けたり、守ったりという流れで戦闘能力を使わざるを得ない。
戦闘シーンはファブルの独壇場で敵なしのカッコよさがある。拳銃やナイフで命を狙われても、設定上は極限まで鍛え抜かれた殺し屋なので強い強い。無敵感を楽しめる。
ファブルの妹設定であるヨウコも面白くて。いい女として男に言い寄られたりするんだけど、ただスルーするだけでは退屈と、男を使って遊ぶ様なんかも笑える。バーの酒飲み対決は必見(笑)
サユリ 押切蓮介
3行でわかるストーリー
- 念願のマイホームを手に入れた一家
- 住み始めてから家族への不幸が続く
- 家に住み憑いているモノの正体とは?
ホラー漫画ではあるけれど、色んな要素が入っているので、怖いのが苦手な人でも読める。ホラー&家族愛がテーマにあり、見せ場は幽霊との戦いとなる。意外な人物(?)が強キャラで、出てきたら見どころ盛りだくさん。
ストーリーの前半と後半で、漫画が変わるところも面白い。あれ?いつになったら展開は動くの?と序盤は思ってしまうが、後半はとにかく動く。あえて緩急をつけていると思われる。
サユリの魅力は、ただホラーをやっているのではなく、ありがちなホラー作品に押切作品としての味付けを施している点だ。もともと幽霊関係の作品が多い作者だけに、しっかり読ませる内容だった。
三億円事件奇譚 モンタージュ 渡辺潤
3行でわかるストーリー
- 昭和の未解決事件である3億円事件がモチーフ
- 3億円事件の犯人の息子だと告げられ困惑する主人公
- 真相を明らかにしていくミステリーサスペンス
未解決事件の特集などで、何度も扱われてきた3億円事件。僕自身、当時は生まれてなかったがそれでもこの事件は知らないうちに頭に残るようになった。それだけ有名な事件のため、期待に応えてくれるかどうか、本作を読み始めた時に思ったのを覚えている。
しかし、心配の余地もないほど展開が広がって行くため物語に入り込める。真相を明らかにする道のりが、捜査を行っているように感じられ、刑事モノが好きな人など向いているかと。
事件の背景については、読めば読むほど複雑な問題が絡んでいることが分かってくる。フィクションとは言え、ここまで緻密に描くのも大変だっただろう。とても楽しませてもらえた。
3月のライオン 羽海野チカ
3行でわかるストーリー
- 主人公である桐山零は幼い頃に家族を事故で失くしている
- 15歳で将棋のプロ棋士になるも周囲に馴染めず孤立していた
- そんな中で出会った川本家との繋がりが桐山の心境を変えていく
ストーリー、キャラ個性、雰囲気とどの要素も完璧。面白い点を上げれば際限無し。一つ言えるのは、人間と人間がぶつかり合うことで生まれる心情部分は他漫画の追随を許さない。
心を閉ざす桐山に接する川本家のあたたかさ。棋士たちの盤上・盤外での戦いの苦しみ。川本家の次女ひなたに起こるイジメ問題。家を捨てたダメ親父と残された家族の衝突。
これらの複雑な問題に対して、各々がどのように向き合っているかに注目。漫画の枠を超え、現実にその場にいるような当事者としての心の動きを感じられる数少ない作品。
SAND LAND 鳥山明
3行でわかるストーリー
- サンドランドは砂漠の国。水源は国に管理され水は法外な値段で取引されていた
- 現状打破のため「幻の泉」を探す保安官ラオと悪魔の王子ベルゼブブ
- 水を巡り国王軍とベルゼブブたちの戦いが繰り広げられる
よくもまあこれだけの内容を上手く短編でまとめられたものだなと。鳥山ワールドの世界観は崩してないし、ストーリーも「水を探す旅」と分かりやすい。これでつまらない訳がない(笑)
幻の泉に向かって突き進むラオとベルゼブブたちの相性も抜群。メカによる戦いや、武器や爆弾といった軍事スタイルのシーンまでキレイに描かれている。そして合間に入れる鳥山コメディ。
悪魔の王子は強いのだけど、ただ強いだけじゃなくて覚醒モードも織り込んでいるのでただのバトルで終わらせない感じが好き。全体的にどこかで読んだ事のある流れだけど、わかっていても退屈しないテンポの良さに脱帽。
GTO 藤沢とおる
3行でわかるストーリー
- 主人公は鬼塚英吉。かつて暴走族に所属していた不良
- しかし教師として問題のあるクラスを任されるべく採用される
- 次々に起こる生徒からの反発、トラブルを解決していく
こんな先生がいたらいいんだけどな。そう思わせてくれる教師なのが鬼塚。先生と言っても、限りなく生徒よりの考えを持っているし、何なら教員側に楯突くありさま。
金八先生が正統派とするなら、その逆を鬼塚は進んでいる。時には生徒を脅すし、ハメようともする。もちろん彼なりの指導なのだけど、それがぶっ飛んでいて読者も惹き込まれる。
もう一つ。本作が面白いのは、教員側もかなり問題のあるキャラが揃っている点。保身のことしか考えない教頭、同僚女性へのストーカー教師。生徒も教師も問題だらけで息つく暇もない。
四月は君の嘘 新川直司
3行でわかるストーリー
- 母の死をきっかけにピアノをやめた主人公
- その後ヴァイオリニストの少女に出会いピアノを再開
- 主人公と少女の恋物語や、演奏におけるライバルたちの物語
これは泣かずにいられない。漫画に限らず、どんな作品にも言えることだけど、面白い漫画ほどラストが重要になってくる。ラストが残念な作品がどれだけあることか。
しかし本作は、ラストに向かってブレなき姿勢を保ち続ける。そして歴代の漫画と比較しても遜色のない、鮮やで美しい最後に繋がる。ラストの話ばかりだが、もちろん途中も面白い。
演奏にすべてをかけて挑むライバルたちとの戦い。主人公を想う、幼馴染の存在。不思議とどのキャラの立場にも感情移入できる。感想を書いている今も興奮気味になってしまうほど(笑)
シマウマ 小幡文生
3行でわかるストーリー
- 「回収屋」として復讐を代行することになった主人公の物語
- 復讐内容が酷くかなりのグロ作品となっている
- 回収屋組織と主人公の間にもストーリーがある
暴力表現、グロ描写などが苦手でなければ面白い。復讐するために、毎度のように残虐な行為を行っているので、慣れてしまうとスイスイ読める。良いことなのかはわからないけど・・(苦笑)
グロ表現にエロ表現など、それなりの画力がないと成立しないことになるが、本作にその手の心配は不要。画力が物語を引っ張るため、よくこれだけの残虐ネタを出せるなと関心してしまう。
主人公も最初は、回収屋ではなかったのだけど、ひょんなことから巻き込まれていくストーリーは良い。詐欺をやったり、自業自得な側面は捨てきれないんだけども。注意として、食事中は読まない方がいい。
女帝 原作/倉科遼 作画/和気一作
3行でわかるストーリー
- 主人公・立花彩香がホステスとして成り上がっていく物語
- 政界、ヤクザなど多岐に渡る人物との付き合いの中で磨かれて行く彩香
- 修羅場を乗り越える過程や、一人の女性としての生き様を描く
軽い気持ちで1巻を読んだら止まらなくなった。ホステスという生き方は、いかに男にお金を出させるかという話でもあるのだけど、人間としての付き合いもしっかり描かれていて面白い。
彩香は母親とともに自分を捨てた父親や、高校時代に汚名を着せてきた周囲の人間を見返そうとするんだけどこのストーリーも良い。それが女帝という形で、女を武器に生きる道を選ばせている。
伏線は多くあるのだけど、その伏線が気になって仕方がないように張り巡らされている。彩香と父親や、彩香とヤクザの関係などかな。この先に何が待っているのかを刺激する設定が上手い。ホステスの世界がわからない人も楽しく読める。
女帝花舞 原作/倉科遼 作画/和気一作
3行でわかるストーリー
- 「女帝」シリーズの続編
- 銀座の女帝・彩香の娘である明日香が主人公
- 母への反骨心から芸鼓として祇園の女帝を目指す
女帝を読んでしまった人には、どうしても二番煎じなシーンが見透けてしまうのは仕方がないだろう。実際、回想シーンも含めて「女帝」ありきの作品として進行している。
ストーリーの流れは、明日香の周りで起こるトラブルを、明日香自身も巻き込まれる形で解決していくというもの。政界、ヤクザ、芸舞妓のライバルなどとの関係を楽しむ漫画。
芸鼓遊びなんてお金持ちの世界なのだけど。本作を読むと、歴史ある文化という意味で花街の魅力に惹かれる。ちょっと怖そうだけど・・。京都旅行するなら、雰囲気だけでも見に行ってみたい。
SHORT GAME ~あだち充が短編で紡ぐ高校野球~ あだち充
3行でわかるストーリー
- あだち充の描く1話完結マンガ
- 高校野球に関わる男女の青春ストーリー
- エースや4番など主役でない人にもスポットを当てている
あだち充作品と言えば、エースや4番バッターなど、ポジション的に花形を扱うことが多い。しかし本作品は、各ストーリーでベンチや控えなどの人物にもスポットを当てる。
「目立つ場所にいなくても、見ている人は見ているんだぞ」というメッセージ性を出していると共に、あだち充が描く作品を別の面から見れる楽しさがあった。また、あだち充の表現幅を見せられた気がする。
実際、エースとヒロインとか。4番とマネージャーのカップルを見ても楽しくない(笑)他の部員が、心底祝福しているケースは稀だろう。男女の青春ストーリーとして楽しめた。
ショート・プログラム ~ガールズタイプ~ あだち充
3行でわかるストーリー
- あだち充による短編集
- 男女の恋愛模様をテーマに青春を描く
- ガールズタイプとあるがそこまで女子を強調していない
あだち充作品を読むと必ず恋をしてしまう。なぜなら、彼の描く女子は男心を掴んで離さない素敵なヒロインになるから。そんな、あだち充作品に出てくるヒロインの魅力を求めて本作に手を出した。
しかし「ガールズタイプ」とサブタイトル付けされているだけで、そこまで女子を全面に押しているわけでもない。むしろ男女の恋愛模様を描くことに徹している。つまり青春モノなのだ。
女子が読んでも面白いがコンセプト。少女漫画に掲載されていた作品も多く載せており、スポーツなど男の戦いだけでなく、女子目線もきちんと意識しており読み応えはバッチリ。
正直不動産 著者:大谷アキラ 原案:夏原武 脚本:水野光博
3行でわかるストーリー
- 主人公・永瀬財地は不動産会社の営業マン
- 契約利益を優先するため嘘をいとわず成績を上げていた
- しかし、とある出来事を期にウソがつけない体質になってしまう
こんな営業マンがいるのであれば、不動産の相談に乗ってもらいたいと思える。それだけ業界の裏話にはするどく切り込み、顧客ファーストを優先した模様が徹底されている作品。
不動産はまだまだ一般には馴染みのない領域で、専門知識のある人達が優位な状況。そういった中で、永瀬がひたすら正直に客商売をしているのが見ていて清々しい。登場するライバルの悪い感じも最高。
不動産屋として明らかに不利になることも伝え、それでも顧客に納得してもらう営業姿勢。手数料ビジネスなのはわかっているので、永瀬のような営業にこそ稼がせてやりたいと思える。不動産入門にもおすすめ。
進撃の巨人 諫山創
3行でわかるストーリー
- 正体不明の巨人と人類の戦いを描くダークファンタジー
- 巨人から守られた街壁が破壊されるなど人類は危機に直面していく
- 主人公エレンは巨人を駆逐すべく訓練兵として入隊する
これほど「絶望」という言葉が似合う漫画もそうそう無い。巨人に追われて殺される人間、戦って勝機を見つけたと思ったら違っていた兵士。どこまでも希望が見えず、絶望感が漂っている。
また、作者自信が伏線をきちんと考え作り込んだ設定は秀逸。怖い巨人に人間が殺される雰囲気だけなら、どこかで見たような気がすることもあるだろう。そこに壮大なストーリーを練り込むことに成功したのが本作。
画力面では、上手いと言えないながら、本作に合う絵を描いている。ダークな世界観にマッチしており、この絵だからこそ恐怖や絶望感が増々に。好みはあると思うが、イラストに抵抗が無ければ読んでおくべき。
新宿スワン 和久井健
3行でわかるストーリー
- 2000年代初頭の新宿歌舞伎町が舞台
- のちにスカウトマンとなる主人公・白鳥龍彦の裏社会ストーリー
- 女性を夜の世界へスカウトする話や、ヤクザを含む裏社会での抗争を描いている
めっちゃめちゃハマった。自分が全く関与することがないということもあるが、裏社会の話をスカウトマン視点で見るというのが面白い。アウトローやヤクザな世界が好きならすぐハマる。
序盤は女性をお水の世界に誘うことから。比較的ライトな感じで始まるも、すぐに他のスカウト会社と戦ったり、覚醒剤が出てきたり。女性が襲われたり。もうヤバいヤバいな話だらけで刺激される。
でもこの主人公タツヒコが純粋な男で、この荒んだ舞台で筋を通し続ける。展開的には、誰かがピンチになって、そこからタツヒコを含む正義がやってくるパターン。悪の世界観では群を抜いている漫画。
じんべえ あだち充
3行でわかるストーリー
- 主人公・高梨陣平(じんべえ)とその娘・美久の父娘コメディ
- じんべえは妻と死別しているが、妻の連れ子が美久となる(血縁関係なし)
- 義理の父と娘、男と女など、複雑ゆえの関係模様を描いている
賛否分かれる部分もある本作。血の繋がらない父娘が、男女として意識するような描写があるのは受け入れられないという気持ちも分かる。ただ、あだち充なのでそんなに生々しさもなくむしろ爽やか。
ラストは綺麗にまとまっており、すごく良い終わり方だった。あだち充と言えば野球漫画なのだけど、こういった作品も描けるならもっと出して欲しい。コメディのさじ加減も絶妙だ。
血縁関係にない親子は、今の時代はそんなに不思議でもなくなっている。でも本作は1992年に連載が始まっていて、なかなか時代を先取りして描かれていたんだなと妙な感動があった。
好きだけじゃ続かない 松田洋子
3行でわかるストーリー
- 松田洋子の短編集
- メインとなる2作品+3作品の全5作収録
- フィクションも混ぜつつ半自伝にもなっている
ちょっと複雑というか。収録作の「平凡なヨウコちゃん」には衝撃を受けた。作者の半自伝であるということを、あとがきで書いてあるのを読んだが、苦労された方なのだろうなと・・。
読まないと分からないのだけど、ヤク中のおばあちゃんを小屋に入れるためにDIYしてるおじいちゃんとかショッキング。昔はそういうので良かったのかなと、軽くショックを受けた(苦笑)女のポン中はなかなか治らんとかリアリティすごい。
底辺というと失礼だけど、関わってる人たちもヤクザとかそういうのばかり。でもそこが松田先生の作家精神を作り上げたのだと思うと、やっぱ人生は苦労したもの勝ちなのかな。そんな風に思わされる。
すこしふしぎな小松さん 大井昌和
3行でわかるストーリー
- 主人公はSF小説オタクの女子高生・小松さん
- SF小説好きの日常を描く読書コメディ
- SF小説を知らない人も楽しめる内容
僕は全くSF小説に興味がないのだけど、オタク的な思考は理解できる。途中SF小説の代表作が小松さんから発せられるが、SFを読まない人には何のことかチンプンカンプン・・だが面白い!
それでも読み進められるのは、小松さんの愛くるしい可愛らしさにある。女子高生と言えば、恋だの友達との遊びだのに夢中な時期のはず。そんな時期に、ひたすらSF小説に没頭している姿が良い。
小松さんのことが気になる男子生徒も出てくるが、彼もまた小松さんのことが好きで無理にSF小説トークに合わせていく。イバラの道だと思うのだけど、男の立場からすると話の手がかりになるなら頑張る気持ちわかる(苦笑)
Stand by me 描クえもん 佐藤秀峰
3行でわかるストーリー
- 主人公は漫画アシスタントの満賀描男(23歳)で漫画家を目指している
- そんな主人公の元に「未来から来た自分」と名乗るおっさんが現れる
- 漫画家を目指す描男は、彼の忠告を聞かないのだが・・
まず絵がめちゃくちゃ上手い。佐藤秀峰作品は読んできたけれど、このレベルまで描くことができるようになるものかと思ってしまう作家の一人。セクシーな女性など、エロ漫画かと思うほど雰囲気を出している。
タイトルはドラえもんのオマージュだが、ストーリーは面白い。未来の自分と名乗るおっさんは、何かと描男に忠告を続ける。漫画家をやめろとか、あの女はダメだとか。描男の立場なら、忠告は聞けないと思うけど。
それにしても、人間の嫌な部分をあぶり出すかのような描写は本当にすごい。編集部の人とか、高圧的な感じで出てくるのだけど、実際にいた人なんだろうな~と思わされる(苦笑)
ストーカー浄化団 原作:オオガヒロミチ その他:オオイシヒロト
3行でわかるストーリー
- ストーカーが現れる
- 3人組の男が無償で女性を守る
- だがストーカー退治のやり口がえげつない
法律では対処できないようなストーカー(事件化してないものなど)を、警察や法律に変わって裁く物語。ストーカー男がストーカー化する少し前から描いており、リアルで妙な気持ち悪さがある。
通常ストーカーは凶行がエスカレートしたらヤバイ!という話になるが、この作品は女性を守る3人組の男たちがエスカレートしそうな雰囲気を醸し出している(苦笑)
文字通りの浄化団として登場したところだが、まだ作品としては始まったばかり。ここからどうストーリーを動かすのかを楽しみにしておきたい。
スローステップ あだち充
3行でわかるストーリー
- 主人公は高校2年生の中里美夏
- 美夏はひょんなことから変装した「須藤麻里亜」にもなりきる
- 美夏と麻里亜を巡った3人の男たち(門松・秋葉・山桜)による恋の争奪戦
美夏か須藤麻里亜かを選ぶなら、須藤麻里亜かな。何となくだけど、メガネっ子でおしとやかタイプで可愛い。この使い分けに気づけない男キャラたちは、漫画だなぁと思いつつも読み進めてしまう。
ただし中途半端な話になっているところは否めない。作中ではソフトボールとボクシングが主に扱われているのだけど、どっちつかずな距離感で入り込みにくい。加えて3人の男が、美夏の周りをウロウロして落ち着かない。
四角関係になれば美夏が困惑するはずなのだけど、彼女自身が周りを困惑させているストーリー。ラブコメなので何でもありっちゃありだけど。個人的には取っつかみにくいかな(汗)
善悪の屑(外道の歌) 渡邊ダイスケ
3行でわかるストーリー
- 犯罪を犯すも十分な裁きを受けず反省もしていない者たちがいる
- そんな犯罪者に対して被害者からの復讐代行をする「復讐屋」の2人
- 残酷描写も多いが被害者の無念を晴らす視点で描かれている
紛らわしいのだけど、「善悪の屑」が第一部。「外道の歌」が第二部となる。好きで読んでいたのに、ずっと発売されないなと思っていたら第二部になっていたのは驚き。内容はさほど変わらないのに(苦笑)
バイオレンス作品なので、読み進める緊張感はハンパない。犯罪者側のやり口が鬼畜なので、目には目を・・というやり方で復讐している。グロ系の責めが多いため注意は必要だ。
また現実に起こった事件を脚色するなど、しっかりと元ネタもある。これはあの事件だなと分かるものもあれば、よくわからない事件もあるのでどこまでが本当かは不明だが。ストーリーに変化もつけてくるので面白い。
それでも町は廻っている 石黒正数
3行でわかるストーリー
- 主人公は女子高生・嵐山歩鳥
- 彼女の周りで起こる出来事を描く日常コメディ
- 脱力した歩鳥の天然性やポジティブな感じに惹き込まれる
ジャンル的にはコメディなのだけど、推理したり恋もあり、ボケ倒したり。手当たり次第やってる感はあるが、だからと言って作品の世界観が壊れるわけでもない。むしろそれが「それ町」。
主人公の歩鳥の醸し出すおとぼけ天然キャラが良く、読んでいてポジティブな感覚になれる自分がいた。メイド喫茶で働くのだけど、メイド姿も可愛い。(メイド漫画ではないので注意)
だいたい女子高生のダラダラした姿を漫画にしても、可愛さを全面に押さないとダメだったり、中身に期待しづらいのだけど。本作は、そのダラダラを味わうことが醍醐味となる。
「た行」の漫画
黄昏流星群 弘兼憲史
3行でわかるストーリー
- 40代以降の男女における恋愛を描いている
- 中年~老年に至る過程で起こるドラマをオムニバス化
- ストーリーは数話で完結するため読みやすい
一般社会で起こる男女の恋愛を、中年期以降の人々にスポットを当てて描いてる。恋愛モノは若者が主役になりがちなので、初めて読んだときはいい意味での感動があった。
主役の世代が世代だけに、すでに結婚をしていたり子供が巣立った後など、自分の視点ではわかりにくいところがよかった。昨今は問題になりがちな不倫関係なども多く出てくるが、この世代なら仕方がないのかなと思ったり。
作りはドラマ的になっている。リアル社会で起こりそうで、そんなに起こらないだろうなという流れも多いので、リアリティ追求読者には微妙かも。大人向けなのは間違いない。
ただ離婚してないだけ 本田優貴
3行でわかるストーリー
- 結婚7年目だが冷え切った夫婦関係
- 夫である正隆は新聞配達の女性(17歳)と不倫
- 不倫から妊娠中絶させてしまったことでトラブルに変わっていく
怒涛のサスペンス漫画。不倫から妊娠中絶なので、ネタバレを回避するまでもなく悪い展開に話は進む。というか、試し読みするだけでも危ない空気はヒシヒシ。不倫相手を家にあげるなどダメだろう・・と。
展開が早いので、中だるみはなくスイスイ読める。タイトルがタイトルだけに、不倫~ドロドロ劇みたいな、昼ドラ的な流れにするのかなと思っていたが、いい意味の裏切りがある。
「本当にあった信じられない事件」チックな話を求めている方に向く作品。最初は夫が不倫してるので、悪いやっちゃな~と思ってたんだけど、妻もなかなかの肝っ玉。
だめんず・うぉ~か~ 倉田真由美
3行でわかるストーリー
- ダメ男ばかり好きになってしまう女性のダメ男体験談マンガ
- 一般女性からエピソードを募集し取材している
- ストーリー作品ではなく色んなダメ男が登場するオムニバス作
世の中には本当にダメ男がいるもんだなと思い知らされる作品。読んでいると同じ男でもありえないという話も多い。ダメ男とそんな男を好きになる女は、無意識に惹かれ合うの物があるのだろう。良い悪いは置いておいて。
そんな本作の面白さを語るとするなら、作者である倉田真由美(くらたま)の取材にあるのではないか。作中では聞き手に回りつつ、おかしい男の言動にはツッコミを入れる役として出てくる。
男に暴力を受けたり、騙されたりという悲惨エピソードばかりの中で、ギャグ漫画として見事に成立。ダメ男を題材にしたマンガを出しても、本作を上回るには難しいと言えるレベルまで来ている名作。
血の轍 押見修造
3行でわかるストーリー
- 中学二年生・長部静一と少し過保護な母親・静子がメインに描かれている
- 夏休みになり静一と、親戚一同でハイキングに向かう
- ある事件が起こることから、静子の異常性が浮き彫りになっていく
人によると思うが、けっこう気持ち悪い話である。母子がべったりで、その原因は主には静子が静一に干渉しすぎているからこそ起こるのだけど。まだ中学2年と親の影響を受けている静一がもがいているのが分かる。
毒親というジャンルに属していく母親なのだけど、その毒っぷりがホラーチック。執拗に息子を心的拘束しようとする部分が垣間見えて、親離れしたい時期の男の子には恐怖以外の何物でもない。
親子の形は色々あるが、目に見えないだけで本作のようなケースは多々あるはず。実際に、結婚したら夫がマザコンで母の言いなりとか。それだけ、息子と母親の関係は深いのだろう。テンポも良く読みやすい。
貯金戦士キャッシュマン 鳥山明
3行でわかるストーリー
- 犯罪者に宇宙船をやられ地球に不時着したキャッシュマン
- 宇宙船を直すためには地球でいう「金」が必要だが地球では高額品
- 金を買うために有料で人助けをはじめお金を貯め始める
特撮ヒーローものに近い。キャッシュマンは地球人のチャパットと融合することで、悪人と戦うときに変身する。ただ戦闘する理由は、誰かを有料で助けてお金をもらうという話。
こう話すとちょっぴり残念ヒーローなんだけど、力は宇宙人ということもあって確か。地球人の犯罪者が相手なら、特にピンチらしいピンチもないのがわかるので読んでて退屈(苦笑)
しかしキャッシュマンを楽しむなら戦闘ではなく、彼の性格的なドジ具合を見るべき。いきなり地球人チャパットをはねて死なせるし、さらに稼ぐために融合しちゃう。面白さは微妙なのでおすすめはしないかな・・。
妻に恋する66の方法 福満しげゆき
3行でわかるストーリー
- 作者である福満しげゆき氏と、その妻の日常を描いている
- 主には妻の観察記。夫目線で妻のいろんな一面を見る
- 福満流の家庭円満の秘訣がコンセプト
福光先生の描く女性は可愛いのだけど、本作の妻は特に可愛い。実際の妻(女性)を描いていることもあって、リアリティを感じるからというのも理由にある。もちろん脚色もあるだろうけど。
漫画家として家で製作していることも大きく、妻や子供といる時間が長いからこその観察に繋がっているのだろう。何気ない日常での言動が、妻だけどまだ結婚していない彼女のように可愛く見える不思議。
結婚してマンネリ化して退屈に思っている方は、配偶者を福満氏のような目線で見るといいのではないかと思う。妻が面白い人であると、福満氏のようにネタとして人に話したりもできるのではないだろうか(笑)
デスノート 小畑健
3行でわかるストーリー
- 主人公である高校生の夜神ライトがデスノートを拾う
- デスノートに名前を書かれたものは死ぬ
- ライトは正義のためにノートを使うも犯人探しが始まる
もし自分がデスノートを手にしたら・・。そんなことを考えながら、楽しみに読んでいた作品。ライトとLの戦いが、かなり高度な頭脳戦になっており、伏線も上手く張り巡らせている。
「デスノートに書かれた人間は死ぬ」という設定はもちろん面白い。さらに、ノートを使った人間を探し出すという推理サスペンスの要素も含んだことが、爆発的な人気を生んだ理由だろう。
それにしても、デスノートに関しては読んだことがない人にも、ネタバレしているケースが多いのではないだろうか。シリアスな場面をコラージュに、ネットでは使われていることが多いよね(笑)
テセウスの船 東元俊哉
3行でわかるストーリー
- 1989年に起きた音臼小学校での無差別殺人事件
- 事件の容疑で逮捕されたのは主人公・田村心の父である佐野
- 真犯人を突き止めるサスペンス作品
ドラマでヒットしたから読んでみたのだけど面白かった。犯人が誰なのかを考えるのも面白かったし、出てくる人物はどの人も怪しいし推理が楽しめる。
タイムスリップ設定が入っているため、そんなにSF要素が好きではない自分にはやや心配があったが。しかし作中では上手くストーリーを作っていて、折り合いはしっかりしていると感じた。
家族愛とか大事な人を守るとか。そういったメッセージ性も強くあり、個人的には色んな人におすすめしたい。「加害者の家族」の人生についてもかなり細かく描かれているのが印象的。
テリトリー 此元和津也
3行でわかるストーリー
- 此元和津也による短編ストーリー
- シュール系の作品を7つ収録
- 作者のセンスが溢れたオムニバス形式で描かれている
短編集というのは、作者のことを知った上で読んでみたいと思った時に読むものだと思う。しかし本作は、何となく暇なので読んでみた。作者がセトウツミを描いていることは知っていた程度。
感想は予想外に面白かった。不気味さや怖さを使いつつ、しっかりと最後は面白くしていく流れを掴みきっている。ユーモアのセンスがあるため、それが十分に効いているからだろう。
作者の得意とする笑い要素は強い。どの作品にもボケを配置して、しっかりツッコミ役を介してまとめていく。百年カレンダーなど、最初は重そうだなと思っていたら案の定・・。良い短編作。
東京タラレバ娘 東村アキコ
3行でわかるストーリー
- ~してたら、~してればと、タラレバ後悔の話に花咲かすアラサー3人
- 飲み屋で無駄に過ごす彼女らの前に現れたイケメンモデルに喝をくらう3人
- 結婚に行き詰まる独身女性の心境を面白おかしく描いている
アラサー独身女性が20代を振り返ってうだうだ言ってるのだけど、独身で焦っている層には男女関係なく響く作品。上手く行かない現実を自虐している姿とか。
自分の経験上、若き日に比べてストライクゾーンがどんどん狭くなっていくけど、自分は歳を重ねるしで四苦八苦。不安な気持ちが見事に描かれているので、共感しまくりでブームになったのも分かる。
気になる異性が出てきた時、その瞬間の喜びや期待とか。ダメになってしまった時の絶望感とか。独身アラサーに取ってのわかる~がたくさん。展開に波が起こるが、まるで独身の心みたいでリアルな完成度。
ドラゴンボール 鳥山明
3行でわかるストーリー
- 7つ集めることでどんな願いも叶うドラゴンボールが存在する
- 孫悟空を中心に集まるライバルとの格闘バトルが醍醐味
- 各キャラクターが成長と共に強くなる過程が描かれていく
ドラゴンボールの魅力は、描かれるキャラのカッコよさや強さだとずっと思っていた。小学生の頃から読んでいたので、子供ウケするポイントになっているのは確かと言える。
しかし大人になった今、再びドラゴンボールを考察すると、魅力の秘密は「絶望と希望の相互作用」なのではないかと思うようになった。
例えば悟空たちの前にライバルが現れる度に、とてつもない絶望を感じてしまう。そんな絶望的な状況を、悟空なら何とかしてくれるんじゃないかと期待してしまう。実際、悟空はピンチで出てくることが多いよね(笑)
鳥山明○作劇場 1~3 鳥山明
3行でわかるストーリー
- 鳥山明による短編集
- ドラゴンボールやDr.スランプの原案を含む初期作品
- 主には少年ジャンプに掲載された作品を3巻に分けている
短編作品だが、その後の鳥山作品の原案となっているであろうシーンも見受けられてファンには嬉しい。ドラゴンボーイなど、展開がそのままドラゴンボールでも活かされている。
そして、作品の面白さも好みがハッキリ分かれるストーリー。明らかに駄作というと失礼だが、特に面白いポイントがわからない話もいくつかはある。連載紙面でテストしているかのように。
ちなみにおすすめなのは、ドラゴンボールの初期設定と繋がる作品。2巻に掲載されている「騎竜少年(ドラゴンボーイ)」と「トンプー大冒険」はDBファンにしてみると発見だらけで嬉しくなる。
「な行」の漫画
ナイン あだち充
3行でわかるストーリー
- 青秀高校に入学した主人公・新見と他メンバーの野球漫画
- 男女間のラブコメ要素も含まれており弱小チームから強くなる青春ストーリー
- 新見と友人の唐沢が痴漢を撃退したことから物語は始まるが・・
痴漢撃退によって美女を助けるのだけど、この美女が後の野球部マネージャー。痴漢が後の青秀エースとなる倉橋。これで上手くやっていくのだから、ちょっと今では考えられない立ち上がり(笑)
倉橋は要所でいい男の顔を見せるのだけど、最初の痴漢イメージ。そして下着泥棒をやっていたことまで含めると、とても野球部にいられない気がして読んでしまう。
描かれたのが1978年と、かれこれ古いマンガ。痴漢がまだ軽く見られていたことも考えると、そういう時代だったのかなと軽いショック。現代なら炎上するんだろうな(苦笑)
なにわ友あれ 南勝久
3行でわかるストーリー
- 1990年代前半の大阪環状線が舞台
- 車の暴走族たちの生活を描いている(作者の実体験含む)
- 前作ナニワトモアレからの第二部の位置
第一部の「ナニワトモアレ」から読んでおけばと思ったが、第二部である本作「なにわ友あれ」からでも十分に理解できて楽しめる作品。
暴走族やアウトローな人間が多く出てくるため、喧嘩や暴力が耐えない。だけどギャグもしっかり上手く仕込んでいるので笑いもあり読み進めてしまった。
不良たちの気だるそーな感じが漂っており、普通なら怪我して危ないような話でもなぜかほっこり読める。おどれすどれな暴力漫画が読みたいなら余裕でハマる。
人形草紙あやつり左近 作画/小畑健 原作/写楽麿
3行でわかるストーリー
- 主人公は人形遣いである橘左近
- 左近の相棒である童人形「右近」は左近によって操られている
- 左近と右近の一人二役で事件を解決する推理サスペンス
腹話術で人形を操っているのだけど、作中の左近と右近のやり取りを見ていると、まるで右近が生きているかのように見える。そういった意味で、かなり左近がヤバく見えることも(笑)
実際、左近は右近というもう1人の自分と対話することで、数々の事件解決におけるヒントを見つけていく。それにしても殺人の事件舞台はいつも気味が悪く、怖い雰囲気の伝え方も絶妙。
4巻打ち切りではあるが、だからと言って終わりに向かって内容がお粗末になるわけではない。ラストもきっちり事件に向き合っていたので、軽く読むには良い作品だと思う。打ち切りは悔やまれるところ。
「は行」の漫画
ハイスコアガール 押切蓮介
3行でわかるストーリー
- 1990年代の格闘ゲーマー少年たちの物語
- 主人公ハルオとヒロイン晶の対決が因縁となり幕開け
- 少年たちのもどかしい恋心を描くラブコメ作品
90年代の格ゲーブームを知っている人なら、誰でも楽しめる作品。当時の子供は、こぞって遊んだので懐かしくて引き込まれるのは間違いなし。格ゲーカタログ漫画とも言える。
しかし僕の評価している点は、本作におけるラブコメ要素。序盤でハルオと晶はゲームを通じた因縁関係になるが、僕はすぐに「ああ、この二人は意識しあってるんだな」と気づいた。みんなもだと思うけど(笑)
気持ちのすれ違いも多く、ハルオを巡ってライバルの女の子も現れるしで、ゲームが題材なのにラブコメとしての完成度が非常に高い。ゲームも恋も謳歌している青春ここにあり。
初恋甲子園 作画:あだち充 原作:やまさき十三
3行でわかるストーリー
- 若葉高校野球部のエース兼4番の沢村俊が主人公
- 沢村とマネージャー橘純子による初恋青春ストーリー
- しかし沢村の父親の転勤で、過ごせる時間がわずかであることが発覚する
いきなり沢村の父親が転勤することが決まるのだけど、夏の甲子園を目指すために「負けるまでは残っていい」という条件がつく。この「負ければ即引っ越し」の中で頑張る沢村たちを描いた作品。
せっかくお互いに好きということが分かったのに、引っ越しというどうにもならない条件で引き裂かれる二人。可哀相な気はするのだけど、それがあるからこそ燃えるところ。スポ根要素は少しだけど。
実際、沢村の父親がいないことで食事が疎かになるのを防ぐために、橘は沢村と同棲してしまうし。この同棲がトラブルのもとになったりするのだけど、王道ストーリーならではの読み応えがある。
初情事まであと1時間 ノッツ
3行でわかるストーリー
- 男女が初エッチに至る1時間前の様子をギャグ漫画化
- 色んなカップル・シチュエーションに分かれたオムニバス形式
- 初々しさや焦れったさを楽しむための作品
「これ以上を描くとエロ漫画」という線引きがされてあって、変な期待をせずにストレートに読める面白さがある。初エッチ前のドタバタ感をギャグ化しているのは珍しい。
ごく普通のカップルから、勇者と魔法使い。SF的に男女がUFOにさらわれ・・といった話まで。多種多様なカップルとシチュエーションでマンネリしないようにされてある。
ただギャグは人を選ぶ。クスっとするレベルなので、ど下ネタじゃないと笑えないよという人には合わないかと。ピュアな感じが好きだったり、絵柄が好きという人向け。
バーナード嬢曰く。 施川ユウキ
3行でわかるストーリー
- 主人公はグータラ読書家のバーナード嬢こと町田さわ子
- 読書が好きな仲間と共に読書家あるあるを語る
- 「読書家に見られたい」という願望が先行しすぎなストーリー
気持ちはすごく分かる。読書家って賢そうで、高尚な趣味にも見えるので羨ましい。マンガは読めるけど、文章となるとしんどくて読めない自分には主人公の気持ちがよく分かる。
作中ではあらゆる本について触れているのだけど、もちろん漫画内で説明する程度なので深い知識は不要。そのため、特に読んだこともないけど何か分かったような感覚になることを共有して楽しめる。
欠点と言っていいのだろうか。絵はお世辞にも上手いとは言えないが、作者は読書に捧げる時間が多かったんだろうと思うと文句は言えない。読書好きな方にのみおすすめだ。
HaHa 押切蓮介
3行でわかるストーリー
- 押切蓮介を生んだ母親・亘江(ノブエ)の半生を描く
- 作者が母から聞いた実話エピソード
- ノブエさんがどんな子供時代を過ごしたかや、働いていた話などを聞く
スケバンをやっていた母ちゃんなので、エピソードとしては目を引くものが多い。押切先生も無茶苦茶な幼少期だったが、そういうのは遺伝するものなんだなと。
ノブエさんは、すごく母ちゃんという感じがする。小言は多いのだけど、耳に残ることを言っていて読者にも得るものがある。僕には「短気は損気」の名言が残っているが、ノブエさんも短気なので矛盾しているのが面白い(笑)
ひとつ雰囲気で笑えるのが、作者が妙に敬語で母親と話しているところ。実際はどうなのかわからないが、「~ですか」と自然な形で使っているシュールさ。作者は良いお母さんに巡り会えたね!
盤上の詰みと罰 松本渚
3行でわかるストーリー
- 将棋棋士で元女流6冠の霧島都が主人公
- ある時の対局を堺に1ヶ月ごとに記憶を失くす体質になってしまう
- 最後に対局した相手の正体を探すため度に出る
掲載誌の廃刊に伴って、漫画も終わらせてしまった勿体無い作品。ストーリーはしっかり組み立てており、次々に登場するライバルとの対局が面白い。
対局中の描写が素晴らしく、都や相手棋士の将棋を通してにじみ出る想いは、読者にも伝わってくる。都もまた、正体不明の棋士の影を求めて必死になっているが、そこが愛くるしいと言うか応援したくなるポイント。
2巻で完結するけれど、伏線の回収を含めて出来は良い。ライバルを圧倒する都の凄さ、そして女子に戻る彼女の可愛い姿はギャップがあり必見。
盤上のポラリス 原作:木口糧 漫画:若松卓宏
3行でわかるストーリー
- 主人公・椿一兵は長崎の離島に住む小学5年生
- 転校生でチェス好きな氷見崎ひめと出会う
- チェスに目覚めた一兵の挑戦ストーリー
この手の作品は、ゲームに詳しくないと退屈そうなイメージがある。しかし本作は、チェスを全くわからない未経験者の自分でも十分に楽しめる内容であった。説明臭さを極力排除した上手さがある。
素人目線を大事にしているので、読者の「チェスなんてわかんねーよ」という立場を一兵が背負っているのも良い。氷見崎に影響を受ける過程で、チェスが面白そうに見えてくるところも刺激性があった。
勿体ないのは4巻打ち切りという点。ただチェスを漫画化させた退屈漫画なら納得だが、内容に文句がつけられない進行だっただけに残念。打ち切りでも綺麗にまとまっておりポテンシャルの高い作品として評価したい。
陽あたり良好 あだち充
3行でわかるストーリー
- 主人公・かすみは、下宿を営む叔母の家から高校に通うことになった
- しかし下宿には同じ高校の男子高生4人。下宿、学校を通し共に過ごすことになる
- かすみには克彦という想いを寄せるボーイフレンドがいるが・・
昭和55年に発売されている青春ラブコメ。古さは感じながらも、高校生男女が抱く異性への恋心は今と変わらない輝きを感じさせる。主には主人公かすみが、青春やってんな!wって感じだが(笑)
対象的に男子の心情描写は少ないかな。特にかすみが意識する、高杉勇作は鈍感な男。かすみが克彦との間で揺れているのに気づいてない。そこが話の軸でもあるんだけど、かすみはヤキモキしていて読み手がハラハラ。
途中、「野球漫画化してなかった?」というくらい野球を頑張るシーンも入っている。あれこれ忙しいけど、まとまりのいい作品だった。
柊様は自分を探している。 西森博之
3行でわかるストーリー
- 男子高校生・白馬圭二郎の前に現れる正体不明の美少女
- 美少女はじぶんが「柊」ということしか分かっていない
- 柊の正体を探すための学園・ラブコメ作
全8巻だが、なかなか柊の正体の核心に近づけないので、「一体何者なのか?」という憶測でモヤモヤしたり楽しめたり。柊の上から目線で展開されるストーリーは癖になる。
周りを奴隷扱いするお姫様のようで、それでも時折見せる彼女の優しさにキュンと来る場面も多い。アメとムチを使い分け、読者の気持ちまでコントロールされているかのような感覚。
柊に魅了されるポイントは、読み進めてもらうと分かるが、何事にも筋を通す性格を持っていること。起こるトラブルに対して、彼女がどう対処しているのかを見ていると分かるだろう。
ピコピコ少年 押切蓮介
3行でわかるストーリー
- 作者の少年時代エッセイ漫画
- 90年代のゲームエピソードを中心に描いている
- 押切蓮介の原点がわかる
ターボ、スーパーと続いていくのだけど、本作を面白いと思ったら全部読んでしまうべき。家庭用ゲーム機の黎明期を支えた少年たちが面白おかしく描かれている。(ピコピコ少年EXは作者の近況を描いている)
登場キャラの必死さが素晴らしい。少年たちが猿のように飛び回り、ゲームのためなら本能のままに遊び尽くす様子が見られる。自分も少年時代は、ゲームに取り憑かれていたので共感しまくり(笑)
母親にゲームアダプターを隠されたり、遅くまで遊んでいると家の鍵をかけられて怒られるとか。少年時代を思い出すと、懐かしく思えてくるし嬉しい。「ゲーム脳」とかマスコミに取り上げられていた時代だったかな?
響~小説家になる方法~ 柳本光晴
3行でわかるストーリー
- 匿名で届いた小説「お伽の庭」に衝撃を受ける文芸編集部
- 送り主は主人公の響で15歳の女子高生だった
- 響が小説を書き始めることで出版業界が揺れ始める
まず惚れたのは響の性格。曲げられない信念は徹底的に大事にし、小説づくりに一切妥協を許さない。とても女子高生とは思えない態度で、周りの大人が翻弄される面白さがある。
小説を書かせれば天才だが、その他の面での社会性に難癖がつくところなど、まるで暴れ馬のようだ。小説を読まない人でも、なんだかすごい小説を書いていることが伝わってくる。
作中、響がトラブルを起こす展開がパターンにもなっているのだけど、それがお約束と分かっていても見たくなる。響が大人を諭すシーンなどもあるが、いつも痺れてしまう(笑)
BLACK CAT 矢吹健太朗
3行でわかるストーリー
- 主人公・トレインは秘密結社クロノスで「ブラックキャット」と呼ばれていた
- 現在は賞金稼ぎとして掃除屋(スイーパー)を行い相棒スヴェンと生計を立てている
- トレインたちの前に現れる「星の使徒」を含むライバルたちとの戦いが勃発する
トレインが銃を自在に操るガンアクション漫画。と言いたいところだが、登場するキャラごとに得意武器が存在するため必ずしも銃撃戦がメインという訳ではない。個人的にはトレインの銃アクションが好きだけど。
むしろ超能力を使う敵が多く、相棒スヴェンも予知眼を使えるなど何でもありのファンタジーバトルと言える。ストーリーにも影響するため、この能力者バトルが見どころでもある。
王道系のバトル漫画なので、展開的にはトリッキーと言える話は期待できない。ただ、カッコよさという点では優れていて、トレインの人間性や過去から現在に繋がるストーリーはドラマティック。
ブラックジャックによろしく 佐藤秀峰
3行でわかるストーリー
- 主人公は研修医の斉藤英二郎(25)
- 医療現場に研修医として各部署を回る
- 医療全般に起こる不都合な現実に向き合う作品
かなり踏み込んだ話を描いている。主には医者の世界で起こっている不条理がテーマで、主人公の英二郎が日々葛藤しながら頑張るストーリー。リアリティを追求した医療漫画。
もちろんフィクションなので、登場してくるキャラが現実にウヨウヨいるという話ではない。ただ、現実のニュースで聞くような話が出てくるので、全くのフィクションとも言えない部分がある。
医師と患者の視点で描かれる医療漫画は多いが、本作はさらに上の事情が絡まってくる。医局や派閥とか。医療現場もお金で動いているので、綺麗事だけでは済まないという裏を垣間見れるところが良い。
ブリザードアクセル 鈴木央
3行でわかるストーリー
- 喧嘩に明け暮れる主人公・北里吹雪がフィギュアスケートに出会う
- 運動神経と努力によって才能が開花していく吹雪
- 注目を集めることで力を発揮する吹雪がフィギュアにのめり込む
テレビで見るけど、実際のところはよくわからない。フィギュアスケートを、オリンピックなど騒がれている時にしか見ないという人も多いだろう。そういう人にこそ読まれるべき作品。
フィギュアスケートの難しさと言うか、素人目線だと何がどういう仕組で点数がつくのかなどサッパリである。しかし本作は、そんな複雑な仕組みもステップを追って漫画に取り入れてくる。
◯回転半ジャンプなど、何がどうしてすごいと騒がれるのかなど、読めば読むほどわかってくる。テレビでしか見なかったフィギュアが、漫画で表現されることに感動を覚えた。ストーリーも王道少年漫画で読み応えあり。
プレイボーイ侍 原克玄
3行でわかるストーリー
- 主人公である天谷は女性にモテすぎてしまう
- 女性からモテる秘訣やテクニックを公開しつつギャグ化
- 下ネタやふざけた話でも妙な説得力がある
モテ過ぎるがゆえに、女性関係で困ることがないというのは漫画ならではの話なのだけど。それでも、過去にここまでモテている漫画キャラはあまり記憶にない。
天谷を目当てに女性が並んで待っていることなどありえないので、逆にそういった部分のギャグ化に自然と笑ってしまう。だけど実際にこういう人もいるのでは?という目で見てしまうだけの説得力もあり。
要所要所でギャグから恋愛の自己啓発みたいなことを言うため、場合によっては恋愛テクニックにも使えそう。テクは男性側の心の持ちようという意味も多く含むが、勇気のある方は真似してみてはどうだろうか(笑)
放課後ていぼう日誌 小坂泰之
3行でわかるストーリー
- 関東から田舎の海辺に引っ越してきた主人公・鶴木陽渚
- 海沿いで出会った黒岩悠希にていぼう部に勧誘される
- ていぼう部で釣り活動に励むストーリー
釣り+女子高生のミスマッチを描いた作品。女子高生を描きたいがゆえの作品かなと思ったらなかなか面白い。釣り初心者の目線から始まることや、色んな釣りに挑戦していくのでシロートに優しい。
〇〇ガールという流行りはあるが、釣りガールはまだまだ少ない。ましてや女子高生が釣りをやっているところなんて見たことがない。そんな目新しさを楽しむことができる。
釣りをやっている人なら分かるのだけど、釣りという趣味はかなり女子が嫌う要素が多い。餌つけ、フナムシとか見た目でアレなのだ。1話からタコ締めをやるが、鶴木がドン引きしたり。ま、釣りに興味があれば読むといい作品。
ボーイズ・オン・ザ・ラン 花沢健吾
3行でわかるストーリー
- 妄想に生きるダメ男(27歳)の青春マンガ
- 職場の後輩女性との恋が進展
- しかし関係が上手く行かないことから男として奮起する
仕事も恋愛も上手く行かないという男性は、僕も含めて多くいると思う。むしろ上手く行ってる!人生サイコーだぜ!という人の方が少数派な社会。そんな男性たちの星となるのが本作の主人公。
せっかく憧れの女性と関係が深まって行くのに、トラブルに次ぐトラブルで上手く行かなくなる。これには漫画だけど、掛ける言葉さえ見つからない気持ちになり心が痛む(苦笑)
でもここから巻き返していく展開が非常に良い。リアル喧嘩や、アクション要素も出てきて面白さ全開。ちょっと展開が後半はガラッと変わるも許容範囲で楽しめた。
冒険少年 あだち充
3行でわかるストーリー
- オムニバス形式で展開される、主人公の少年時代の話
- 少年時代に蓋をしていた気持ちや、忘れていたことなどにフォーカス
- 古き日を懐かしむノスタルジックなストーリー
子供時代は楽しかった。楽しかったのだけど、中には思い出したくないことや、良い出来事では無いものも含まれていて・・。そういった話に触れつつ、大人になった現在を描いているストーリー。
子供時代がテーマなので、少し古い時代の描写が見られるがこれがノスタルジックでとても良い。内容そっちのけで、僕も子供の頃を思い返してしまう懐かしい感想を抱いた。
幽霊やタイムスリップといった、非科学的な現象も入るのだけど、ここは好き嫌いが分かれるかもしれない。あだち充と言えば高校青春モノの印象が強いので。そのため、大人視点の作品として楽しむのもファンなら嬉しいのでは。
北斗の拳 作画/原哲夫 原作/武論尊
3行でわかるストーリー
- 核戦争後により秩序が乱れた世界199X年が舞台
- 暴力が支配する世界に現れた北斗神拳の伝承者・ケンシロウが主人公
- ケンシロウが次々に出会うライバルとの戦い
名作すぎるので、どこから伝えるべきだろう。北斗の拳の世界は、とにかく無慈悲で残虐な悪人が支配しているので、ケンシロウの登場には胸が震える。しかもめちゃ強いのでカッコいい。
秘孔を突かれてしまうと「お前はすでに死んでいる」と余命宣告。すぐに身体が破裂するなど、一撃必殺に魅了されるのでたまらなかった。実際、自分を含めた子供時代に真似をしなかった人はいないだろう。
ライバルキャラも魅力的で、影響されて育った有名人も数多い。ケンシロウが雑魚キャラを次々にぶっ飛ばす爽快さと、ライバルに苦戦するパワーバランスも秀逸。アタタタタター!
ぼくは麻理のなか 押見修造
3行でわかるストーリー
- 大学に行けず引きこもりがちな青年・小森功
- 小森はコンビニで見かける女子高生を尾行する
- しかし意識が途切れ、目を覚ますと女子高生になっていた
憧れの子を追いかけていたら、その子の中に入ってしまったという話。しかも、入れ替わったのではなく、小森の意識だけが女子高生に入り、小森は別に存在している。
入れ替わりネタはありがちだろうと思っていたら、いきなり肩透かしを食らう。なるほど、押見ワールドはこういったところから違うのかと。
もし自分が誰かの身体に入り込んだとして、じゃあ入れ替わってるのでは?と思うのが普通なので。小森も2つ人格が存在することになり、焦る気持ちはよく分かる。展開は予想より複雑で、読み応えは感じられる。
「ま行」の漫画
ママはテンパリスト 東村アキコ
3行でわかるストーリー
- 作者の息子・ごっちゃんとの育児奮闘記
- キャッチコピーは「すみません育児ナメてました」
- ギャグ&エッセイとして子育て中の話を面白おかしく描いている
子供って何をやらかすか分からない。そんな事実をヒシヒシと感じさせてくれる作品だった。まあ、予測がつかない行動をごっちゃんが取るので、不覚にも笑ってしまう(笑)
作者自身が面白い方なので、必然的に子供も面白くなるような気はするが。大きいのは作者が、いかに子供の一挙手一投足を漫画向けに昇華させているかだ。
ただ漠然と子育てエッセイを描いても仕方がないが、作者は日常のトラブルを人生の終わりに描くレベルの気持ちで表現する。ママのテンパり具合、ごっちゃんの余裕ぶり。このギャップで2度笑え。
マヤさんの夜ふかし 保谷伸
3行でわかるストーリー
- 真夜中にスカイプで交友する自称・魔女のマヤさんが主人公
- 相手は漫画家志望の豆山でオンラインを通じたやり取りを描いている
- 部屋で他愛もない会話をする日常コメディ
どーでもいいことばかりを話すので、ぶっちゃけ中身はあるようで無い(笑)ソシャゲ課金のことや、ネット通販などのネタは多め。深夜にできることだから限られているのだけども。
基本的に深夜なので、部屋の中で動くこともない。だからこそ見えてくる、何気ない日常での発見を面白おかしく描いている。友達と深夜にダラダラ過ごしている方にはウケるかと。
スカイプで友人と深夜に話すというのは、分かる人には分かるが確かに面白い。妙なテンションになるし、話題的にはどうでもいいことが思わぬ考察的トークに変わることもあるので。
マンガに、編集って必要ですか? 青木U平
3行でわかるストーリー
- 漫画家の佐木小次郎(45)はキャリア8年の中堅漫画家
- 出版不況の中で1発当てねば次が危ないと正念場に立たされる
- そんな中で新コンビとして女性編集者・坂本(24)と組むことに
コメディとして描かれており、ひたすら打ち合わせの様子を1巻では読むことになる。色々と編集と話すのが面倒で、打ち合わせするよりも一人になりたい佐木。もっとコミュニケーションを取るべきと考える坂本。
お互いの思いが重ならず、結果的に佐木が遠慮して苦しそうという話が続く。編集と話すだけ無駄。さっさと製作に取り組んだほうが良いのが、佐木の性格でもあるのだけど無駄が嫌いな人は共感するだろう。
という感じで、あまり発展性が最初はなさそうな立ち上がり。むしろ、モヤモヤ話だらけで面白みがない。しかし、物語はしっかり興味を煽るよう作られている。2~3話でなく、1巻全部を読んで判断すべき。
ミスミソウ
3行でわかるストーリー
- 引っ越してきた少女がイジメに遭い家族ごと家を燃やされる
- 少女は復讐のためイジメていた周囲の生徒を殺していく
- サスペンス&ホラー要素が強くグロ表現も多いバイオレンス作品
イジメる側、イジメられる側。傍観するもの、手を差し伸べるもの。色んな視点から読める作品だが、救われない物語でとても悲しい。1話から気分を害すほど胸糞悪いのだ。
普通のイジメ作品だと、学校のみでの事件扱いなんだけど。加害生徒たちが、学校に来なくなった少女の家を襲撃というのが心底怖い。だからこそ、この少女は復讐劇は鬼と化していく。
設定上は警察も出てきていて、一応は法治国家の中で行われている物語なんだけど。法なんかどうでもいいから、がっつり復讐してしまえ!と少女を応援したくなる漫画だった。グロ表現だけ注意しておくべし。
みどりのマキバオー つの丸
3行でわかるストーリー
- 競走馬として生まれてきたのに見た目はロバ
- 母馬を探すために牧場を飛び出す
- 様々な試練を乗り越え競走馬として成長していく
競馬を題材にした作品なのに、ありえない設定が繰り広げられる。例えばメインの馬は人と話す。レース中は競走馬同士で話すなど、人間との関係がまるで逆のようになっている。
しかし侮れないのがマキバオー。雰囲気はギャグに寄せているにも関わらず、レースになると火花が散りまくりで熱いのなんの。リアル競馬さながらに、マキバオーという一頭の馬を応援してしまうのだ。
90年代の漫画ゆえ、これから読む方もいると思うのでネタバレは避けるが、始まりからは想像がつかないほどの感動作になることは間違いなし。名レース多すぎなのね~!
みゆき あだち充
3行でわかるストーリー
- 主人公・若松真人とダブルヒロインとなる二人のみゆきの三角関係ラブコメ
- 真人は義妹・若松みゆきと同級生・鹿島みゆきの間で気持ちが揺れ続ける
- 恋のライバルも多く、二人のみゆきを狙う男たちとの掛け合いも面白い
単調過ぎて、よくもまあ打ち切りにならずに12巻まで進んだなという感想。というのも、1話完結のテーマが多く、総合的に見るとそんなに面白いと思えないことが多いからだ。
もちろん、当時の漫画として考えれば、そこまでおかしいこともないのかもしれない。ただ、今の時代だと退屈さを感じるのも事実。しかし、最後まで読むとラストで一気に伏線に気づける。
ひょっとして、連載当時に人気していたのは、それだけ読者が伏線に気づいていたからなのかも?とも思う。どちらのみゆきも、本当に幸せになって欲しい。2周目を読むとまた違った角度で楽しめる。
ミュージアム 巴亮介
3行でわかるストーリー
- ある女性がどう猛な犬に生きたまま食い殺される殺人事件が起こる
- 以後、この異常殺人を追うことになる刑事・沢村が主人公
- しかし沢村は妻子が犯人と思われる人物にさらわれるため捜査から外される
僕自身がサスペンス好きなのと、絵が好みだったので面白く読めた。興味を引いたのは、殺害手法が異質だったこと。犬に殺された女性には「ドッグフードの刑」などと示され読者を引き込む。
また沢村が妻子を助けるために動くという緊迫感。刑事として捜査するのとでは、やはり家族がかかっている分だけ伝わるものが変わってくる。そして次々と事件が起こるテンポの良さ。
抜群のバランスだったので、3巻という内容では早く終わりすぎると感じてしまった。逆に短いからこそ、出来上がった漫画なのかもしれないが。グロ注意だけしておきたい。
夢印 浦沢直樹
3行でわかるストーリー
- 借金破綻した父と娘の救済を申し出るナゾの男
- 救済の条件は美術品を盗む(隠す)こと
- 日本とフランスをまたにかけたクライム・サスペンス作
ルーブル美術館から、作者に対して漫画執筆の依頼があったことから描かれた作品。このエピソードだけでも何かすごい(笑)アートに詳しい人ならどうってこと無さそうだが、絵画への関心の無い自分にとって序盤はハードルがあった。(予備知識的な意味で)
でもどうだろう。気がつくと、壮大な作戦を練ってルーブル美術館に展示されてある名画を盗む(隠す)ことになっているではないか。中盤から一気に惹き込まれて満足読了できたし、何ならまた描いて欲しい!
ネタバレするので言及は避けるが、終わりのシーンも非常によかった。伏線回収も上手いし、気がついたら序盤の絵画の話や取っ付きにくさが嘘のよう。娘の存在感をいい具合に出している名作ではないだろうか。
めいしょう 大和ケイスケ
3行でわかるストーリー
- プロ野球チームの新監督に就任したのは小学生の女の子(9歳)だった
- 彼女の名はスーザ・ハモンド。女の子ながら野球に関する頭脳は、稀代の名将顔負け
- 大小問わない野球ネタを全力投球で届ける少女プロ野球監督コメディ
近年でいうギャップ漫画。小学生の女の子がプロ野球監督をやったら~という感じで描かれている。それだけに内容は細かく、とても女子が主人公に思えない。
正直、野球好きなので細かい話もそれなりに知っていると思っていたが・・。予想よりも細かい話でちょっとついていけないネタも(苦笑)ガチ野球ファン向けというニッチな作品。
野球にまつわるルールに始まり、歴史的な観点から監督の仕事を見ている彼女。途中、お友達が登場したり、さらに友達の女の子まで監督だったりするなど徹底した流れ。内容が濃いため、野球好き以外は注意。
名探偵コナン 青山剛昌
3行でわかるストーリー
- 謎の組織の男たちに毒薬を飲まされ幼児化した工藤新一
- 幼児化したことを隠すため「江戸川コナン」と名乗り組織を追う
- 居候させてもらうことになった毛利探偵事務所で次々と難事件を解決していく
事件の推理やトリックを暴いていく内容はもちろん、メインストーリーである黒の組織との戦いも面白い。長編作品になっているが、展開は腐ること無く広がっている安定感アリ。
推理漫画なのだけど、アガサ博士に作ってもらっているアイテムの発想や使用場面がかっこよく斬新。これによって、子供なのに大人並みのアクションが起こせるという面白さに繋がった。
サブストーリーにある新一と蘭のすれ違う恋愛は、ちょっと蘭がかわいそうだ。幼児化したことを知らせると、命を狙われる可能性に晒すので黙っている新一だけど・・。ハッピーエンドを期待。
めぞん一刻 高橋留美子
3行でわかるストーリー
- アパート「一刻館」の住人・五代裕作と管理人・音無響子のラブコメ作
- 住人も個性的なキャラが多くコミカルな日常を描いている
- 響子は夫を若くして亡くしているが五代の人柄に心揺れ動く
未亡人であり夫を忘れられない響子が、少しずつ五代に惹かれていくのが良い。でもライバル・三鷹と真っ向勝負していたら負けていたようにも思う。
というのも五代はパッとしない男だが、女性にモテない訳ではない。(少しはモテるので・・)そんな姿を見てると、たとえ美人の響子でも、うかうか出来ない心理は働くだろう。女性はモテてる男が好きというし。
もし五代に女性の影がなければ、光るのはライバル・完璧男の三鷹だったんじゃないかな。響子が年上という設定も良かった。もし五代が年上だと、頼りなさで不利だったのでは。結末は最初から分かっても道中を楽しむ作品。
土竜の唄 高橋のぼる
3行でわかるストーリー
- 主人公は警察官ながら問題児の菊川玲二
- 暴力団の会長を逮捕するためモグラ(潜入捜査官)になることを任命される
- ヤクザ世界で起こる修羅場をくぐり抜けていくストーリー
ド派手なアクション要素の強い本作。ヤクザの世界なので、命を狙う狙われるなんて話は当たり前。いつ殺されるか分からないようなスリリング展開が魅力になっている。
玲二にはミッションが次々に与えられるのだけど、あくまで潜入捜査官なのでヤクザの仕事に肩入れすることは出来ない。だからあの手この手で危険回避をする知恵比べな場面が面白い。どう切り抜ける!?的な。
絵は個人的に好き。任侠作品にマッチしているし、サービスも兼ねたお色気&エロシーンも上手い。ヤクザと女の関係は密接なので、ある意味では必要なカット。展開も広がって行くので見ごたえがある。
モテキ 久保ミツロウ
3行でわかるストーリー
- 三十路間近の非モテ男・藤本幸世(29歳)が主人公
- ある日を境に知り合いだった女性と次々に仲良くなりモテ期に入る
- モテ経験がないため突然の状態に戸惑いながらもデートをこなしていく
藤本が羨ましいぞ畜生めー!自分から動かない非モテ男性には縁のない話(ズバリ)。漫画だと分かって読むけど、腹が立つくらいモテる藤本に嫉妬してしまった。
モテ始めた藤本の周りの女性キャラが魅力的で、主に4人の女性が入れ替わり立ち替わりに登場。可愛い、美人といった各キャラの個性はあるが、僕は中柴いつか派。
本作は、非モテ男性を主人公にしているだけあって、非モテ男性の心の内を表現するのが上手い。藤本による、非モテならではの女子対応の気まずさにバリバリ共感できる(苦笑)作者は女性だというから驚きだ。
モンモンモン つの丸
3行でわかるストーリー
- お猿のモンモンと弟モンチャックの冒険作品
- 常にギャグ展開が用意されており下品&ふざけた内容が多い
- 家族愛や友情などハートフルな一面も取り入れている
語らせて欲しい。なぜ、こんなに面白いギャグ漫画を無情にも打ち切った・・。当時リアルタイムで読んでいたので、ある日ジャンプから消えたことにショックを受けた。小学生には打ち切りがよく分からず途方に暮れた苦い思い出。
さて、そんなモンモンモンだが、ギャグ漫画好きには推しておきたい一作。何をやらせても無茶苦茶なモンモンと、その取り巻きの掛け合いが笑えてしまう。そして、まともなキャラが少ない(笑)
息をするように鼻くそをほじり、屁をこいているので、子供ウケがいいのは間違いなし。これぞ、少年向けギャグ漫画と言える。
「や行」の漫画
闇金ウシジマくん 真鍋昌平
3行でわかるストーリー
- 闇金融の経営者である丑嶋馨と従業員の物語
- 借金に陥る人たちのリアルな生活がここにある
- ヤクザや半グレといった裏社会の人物も登場
かなりエグい。闇金そのものが非合法の取り組みであるため、その取り巻きも総じてアウトな人物ばかり。作者自身が取材しているため、やや誇張表現はあると思うがリアル。
お金を借りに来る人たちが、どんどん悪い方向に進むさまは、好きで見ているけど後味は悪く胸糞悪い。これを楽しめてウシジマだけど。ハッピーエンドで終わるエピソードもあるが、忘れてしまう程度に少ない。
世界観は、とても汚く気持ちが悪いと思う反面、読み慣れてくると「いつもの日常」に変わる。流れでうっかり「闇金が便利そうだな」と思わないようにご注意を。
「ら行」の漫画
ラブホの上野さん 原作:上野 作画:博士
3行でわかるストーリー
- 主人公はラブホ勤務の上野さん
- 恋愛や男女間の心理テクニックを指南
- 成功した際には五反田キングダム利用をうながす
恋愛テクニックや女性心理など、本を読んだことがある男性は多いはず。僕もその一人。そのため、恋愛テクニックなんてありきたりと考える人は本書を手に取る気もしないだろう。
しかし、そういった方にこそ面白さを実感する余地がある。漫画にすることで、実際にテクニックを使う場面で相手がどういう反応をするのかがイメージしやすくなる。
漫画は面白く読むことで、心理テクニックの基礎と応用がわかりやすく身につく特典付き。初めて知るような話も多く、恋愛が苦手な人ほど楽しめる。
ROOKIES 森田まさのり
3行でわかるストーリー
- 不良たちの不祥事で活動停止中の野球部
- やってきたのは新人教師の主人公・川藤
- 川藤は不良たちを更生させつつ野球部で甲子園を目指す
熱血教師モノが好きなら、本作は避けて通れない。野球漫画としても、教師漫画としてもおすすめ。何しろ川藤が暑苦しいのなんの。熱血系の人って勝手に燃えて、勝手に突っ走るので仕方がないんだけど。
しかし、川藤の場合はまず自分が楽しんでいるように思う。不良にぶつかるにも、改心させたいとか、悪いことをやめさせたいとか・・。教師としての考えでやっているように見えないのだ。
「お前らそんな退屈なことばっかりやってていいのか?」という一個人としてのお節介を焼いている感じ。言動はクサいし、恥ずかしいし。だけど一切ブレない姿勢が、不良でなくとも人に響くのだと思う。
るろうに剣心 和月伸宏
3行でわかるストーリー
- 幕末の動乱に揺れる京都に存在した人斬り抜刀斎・緋村剣心が主人公
- 二度と殺さないという誓いを掲げ旅をする
- 弱き人々のために戦う剣客浪漫
本作にはかなり影響を受けた。中学の頃が、ちょうどるろ剣を語る上で忘れられない志々雄編だったのは大きい。クラスメートとの話題でも、技などの話で盛り上がったいい思い出。
るろ剣の面白いところは、まずバトルの俊敏さにある。スピーディーな動きの表現には、なかなかの技術が必要だが作者はやってのけている。絵なのに、高速感がすごいのだ。
そして各キャラクターの奥義もかっこよく、大一番で決める時はたまらない。歴史上で実在した人物も登場することで、受験を控えながら歴史の勉強をしていた際には少し混乱した(笑)
零落 浅野いにお
3行でわかるストーリー
- 主人公である深澤の8年続いた連載漫画が終わってしまう
- 連載終了により、夫婦や元スタッフなど周りと上手くいかなくなる
- 漫画家としての自分に向き合う苦悩を描く
上手く行っている時は担がれるが、落ち目になると周りから人は離れていく。そんなありがちな風景を描いているのだけど、作中で出てくる深澤の言葉が重たい。
「漫画家だからと漫画を愛している前提で話すのをやめてもらえないか」などは代表的。確かに僕自身、漫画家さんは漫画が好きだからやってると無条件に思っていたので。
何事も最初は興味や好きで始めるが、それを仕事として成立させていくことに対する苦悩を見事に描いた作品。これは漫画家だけでなく、働いている人に共通する部分があるはず。
レベルE 冨樫義博
3行でわかるストーリー
- 宇宙人が地球にやってくることから始まるSF作品
- ドグラ星の王子が地球で起こす悪ふざけを軸にしたオムニバス物語
- 富樫氏がアシスタントを使わずに一人で描いたらどうなるかという企画でもある
ストーリー~伏線、そしてオチまでのギミックが凝っていて、少年誌で連載されたにしては難解と言わざるを得ない作品。天才・富樫を代表する作品として有名だが、個人的にはとっつきにくいと感じた。
例えば高校野球編など、「最終的に誰が原因で発生したトラブルだったのか」という疑問が残ってしまう。解説サイトを読んで納得しないといけない人もいることだろう。
ただの漫画と思って読むとしんどく、芸術や文学的な目線が必要。突拍子もない見開きがあるなど、手抜きなのか狙いなのかもわからない。これが富樫ワールドと言われればそれまでだが。つまり人を選ぶ。
ろくでなしBLUES 森田まさのり
3行でわかるストーリー
- 主人公である前田太尊を中心としたヤンキー漫画
- 他校の喧嘩自慢やライバルたちとのバトルがメイン
- ギャグ要素も見応えがあり笑いも散りばめた作品
本作を語る上では、東京四天王たちとの戦いは避けられない。特に好きだったのは葛西。喧嘩に負けた相手のアバラ折りなど、残虐なやつではあったのだけど。
本当の仲間と呼べるやつがいなくて、結果的に強いやつを倒すことでしかアピールできなかった背景がある。絶対的な強さの裏にある切なさが、とても印象に残ったキャラだ。
絵も独特で、各キャラクターの口を尖らせるような表情だったり、舌を出した変な表情だったり。ビジュアル的にも他の作品にないインパクトを残した伝説のヤンキー漫画である。
「わ行」の漫画
私の少年 高野ひと深
3行でわかるストーリー
- 10代の少年と30代OL女性のおねショタ系作品
- 女性は最初は親心で接していたが少年とともに心境変化が起こる
- 年齢差があることや立場を踏まえた関係が始まる
まず男女逆の設定なら一発アウト。事案になって、即警察を呼ばれてもおかしくない(苦笑)実際、30代男性が10代女性(最初は小学生)と遊んでいたら・・。
最初はサッカーを教えるつもりが、距離が近づくことで気になる関係に発展。人間の性なのか、会っちゃダメとか近づいてはダメだとか。縛られるほど逆にブレーキが効かなくなると思う。
OLの聡子も最初は、少年である真修が夜ひとりでサッカーを練習してたことや、身体にアザがあることなど。心配する親心から動いているので、読み手はもどかしさを受け止めながら読むことになる。
ONE PIECE(ワンピース) 尾田栄一郎
3行でわかるストーリー
- 舞台は大海賊時代。ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を巡る冒険作
- 主人公は海賊王を夢見るモンキー・D・ルフィ
- 仲間との絆や友情、感動、そして迫力バトルが物語を引っ張っていく
説明不要の歴史的名作。少年漫画の王道であり、怪物クラス過ぎ。よっぽど画風が嫌い、感動に持っていく流れが嫌いとか。苦手でなければ読んでおくべきなのは言うまでもない。
漫画ファンに取って辛いのは、展開やパターンが読めてしまうことだと思う。しかしワンピースは、読者の予想を裏切ってくれることが楽しさの秘密。作者の尾田栄一郎は超天才。
バトルでは、ギリギリの攻防で主人公たちが勝ち負けを繰り返すため読めない展開。物語の肝となる回想シーンでは、泣かしに来ると分かっていても感動する。もう、この漫画がある意味では大秘宝なんじゃないかと。