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作家別マンガ批評

押見修造おすすめ7作品をレビュー【思春期表現の鬼才】

2019年9月10日

「思春期を描いた漫画」と聞くと、どの漫画を思い出すでしょうか?

色々あると思いますが、僕は漫画というか・・作者の押見修造先生を思い出すんですよね。押見作品の大半が、ほぼ思春期の男女をテーマにしているのも理由にあるのですが。

そして、ただ思春期を描くだけでなく、やや歪んだ形で表現しているところ。言うなれば思春期の鬼才!

思春期モノを描かせたら、なかなか並べる漫画家さんもいないのではないかと思い作品をまとめてみました。僕のおすすめとしてレビューしているので、読んだことがない方は参考にしてみて下さい。

おすすめ順にレビュー【押見修造を読むならコレだ】

ひとまず僕自身の中で、おすすめ順にまとめてみました。書いてないものは随時レビューしていきます。

ワルツ

ひと言でストーリーをまとめると、女装願望の男子生徒と、その願望を叶える手伝いをする女子生徒の物語。短編ですが、それなりにまとまっています。

なかなか複雑な話で、まず女装をやってる男子生徒。夜にベランダから外に出ているところを、女子生徒に見られて発覚するわけだけど、少し「惡の華」を意識させられました。

思春期ネタに強い押見先生だけど、女装とか女性に憧れる男子をテーマにしてきたところはさすがかなと。男子生徒も若ければ若い分、こういった趣味は外に出すことに抵抗があるはずなので、その心理を上手く描いています。

面白さは微妙なところで、この男女二人の関係性を描いているだけで、そこまでオチに期待しない方が良いです。作者の表現したいテーマが、女装男子だったと解釈しました。

「女子視点」が伝わる作品で、「かわいい」とか「かわいくなりたい」を男子がとにかく連呼してるんですよね。これは男子キャラが発することに意味があって、女子にはこの可愛くなりたい願望が渦巻いているという説得力を感じました。

真夜中のパラノイアスター

短編読み切りで24ページと短いですが、押見先生のデビュー作となります。電子書籍サイトでは、「幻のデビュー作」なんて紹介をされていますが、普通に売られているので気にしなくてOK。

押見修造ファンでなければ、特に読む必要はない漫画なんですが、それでも紹介したいのは主人公の狂人ぶりがハンパないから。これは読んでもらわないとわからないけど、やっぱおかしいですよ(笑)

というのも、幼少期に自分の超能力に気が付きながら、それを使うこと無く生きてきた鬱屈した中年男性の気持ちの爆発を描いているから。押見先生の描くダークファンタジー要素が見れます。

絵が初期の頃なので、特に上手くは無いのですが・・。押見先生自身が「技術も経験もないけど初期衝動1000%」と言い切っている狂気がここにありました。

無名の漫画家だった当時なら、当たって砕けろの精神も必要なので、こういう作品が出てくるのも不思議ではないと思うのですが。若干、押見先生の黒歴史になっているような(汗)

アバンギャルド夢子

主人公である女子高生の夢子は、ちんこが見たくてしょうがないという設定です。あらゆる物がちんこに見えてしまうという、思春期の女子あるある(?)ストーリー。というか、女子はこんなことを考えているのか誰か教えて下さい(笑)

ちんこを見るためなら手段を選ばないところが面白く、男子にヌードデッサンのモデル依頼をしちゃうんですね。押見作品の真髄である「変態性」を惜しみなく発揮してくれます

でも夢子の純粋な「見てみたい願望」だけが先行して、ヌードモデルの男子の気持ちを置き去りにしちゃうシーンとか。「オレはちんこじゃない!人間だ!」は裏名言ではないだろうか。

男子にありがちな思春期妄想ストーリーの逆バージョンという発想にしびれます。男子の妄想コメディなんていくらでもあるけど、女子バージョンでこの内容はレア度が高い。

序盤を少し読むだけで、異質な作品だと気が付くんですよね。雲や電信柱にバットにえんぴつ。何を見てもちんこに見える女子がいるというのは衝撃です(笑)

ぼくは麻理のなか

ダメニート・小森と、美人女子高生・麻里が入れ替わってしまうというストーリー。発想としては新しくは無いけれど、なぜ入れ替わったのかや、入れ替わった相手がどこに行ったか分からない伏線は回収に楽しみが残ります

普通なら、入れ替わった相手と会って話をするんだけど、肝心な麻里がいなくなってしまうので。一方通行な入れ替わりストーリーは、なかなか無いこともありミステリアスな面白さがありました。

それにしても女子高生に入れ替わったとして、正体がばれないように生活するって難しそうですよね。例えば麻里は「カワイイ」という言葉を使わないと、同級生に指摘されてバレるシーンがあります。女子って難しい・・。

エロ要素を入れてくるところは、男性読者を意識してのことなんでしょうね。女子側は普通に引くだろうけど、男女の入れ替わりがテーマなので描かない方が不自然とも言えます。

全部読み終えると、話がすべて繋がるのですが、かなり作り込んであったことが分かります。入れ替わりのありがちさを、作者の工夫で消したとも言える作品。賛否両論はありますが、個人的には好きな仕上がりです。

スイートプールサイド

毛が生えないことに悩む男子中学生と、毛深いことで悩む女子中学生のストーリー。第二次性徴期の問題なので、ナイーブになりがちなテーマとして作者の得分野になっていますね。

実際、毛が生えてくることは成長における大きな変化。もう大人になって、完全に毛が生えきった人は忘れてしまっている感覚ですが。僕自身は下の毛が生えてきたのが中1の頃で、何か嫌だったのを覚えています。

そういう意味では、女の子側に感情移入してしまうところだったのですが、男子である大田(主人公)に剃らせてしまい始めたあたりで、やっぱ漫画だよな(笑)と思ってしまいました。

思春期なので、よりその変態性は表現されており、剃る側・剃られる側で各々楽しんでいる的な描写が見受けられます。毛という共通点だけで繋がった面白い関係。

まだ押見先生の作風として、絵のタッチが未完成なところもストーリーにあってるんですよね。見方を変えると、軽いギャグ的な要素も含んでいるので。またこういう作品を描いて欲しい。

血の轍

「なにこれ怖い」が、第1巻を読み終えての感想でした。息子を想うがあまり、過保護になった母親のストーリーというと、普通っぽい話ではあるんですけど。

過保護を通り越して、共依存みたいになってしまっている母子関係が、ものすごく気持ちの悪さを感じさせます。母親がなにより普通なママっぽさを装うので、異質な部分とのギャップが恐ろしい

同時に、干渉してくる母親の意思から逃れられない静一の苦悩も上手く表現されていると思いました。例えば静一には好きな子が出来るけど、母親による精神的な縛りから逃げられないところとか。

事あるごとに、母親が関与してくるため恐怖煽りが絶妙になってます。毒親は近年のトレンドになっていますが、毒親を超えた作品なのでサスペンス好きならぜひ。

 

僕自身を振り返ってみると、親の影響で物事を判断していることもあるので、他人事とも思えないシンパシーを感じました。

同時に、親の支配に気づけるかどうかは大きな問題なんですよね。親はこう思ってるけど、自分はこうしたいと振り切れるかどうか。静一はこの点で、振り切れないためもどかしさを読み手は受けることになるかと。

 

志乃ちゃんは自分の名前が言えない

吃音に苦しむ女の子を表現している作品です。スムーズに話せなくなるというのは、普通に生活している人にはわからない話なんですけどね。本作はよく表現できているんですよ。

というのも、作者自身が吃音に悩んだ経験があったから。これは読後に知ったことだけど説得力を感じざるを得ないです。やっぱり取材した話だけでは、ここまで評価される作品になっていないかと。

ちなみに、僕自身も吃音ではないけれど、学生時代に似た悩みを抱えていました。音読における場面で、緊張すると声が震えて出なくなることがあったんですね。

志乃ちゃんも、作中で音読をさせられますが、周りに笑われたりします。分かる人には、これがどれだけ辛いことか。吃音に悩む人はもちろん、知らない人にも知ってほしい話です

「周りに笑われても気にしなければいい」みたいな話は、大人の感覚であり吃音で悩む人には通用しないんですよね。教師に「名前くらい言えるようになろう」と諭されるシーンとか。せめて教師は理解しろやと言いたくなりました。

惡の華

今にして思えば、押見修造の作品を読んで行くきっかけとなったのが本作です。中学生男子のちょっとした異性への好奇心が、まさかこんなおかしな方向に進むなんてっ!

そもそも春日が、好きな子の体操着を盗むのが悪い(苦笑)クラスメートの仲村に目撃されており、仲村ペースで展開が左右されていくのが面白い。ある意味で、脅されて金をゆすられるとかよりも怖いホラー要素もあります

もちろん本作が原作なのだけど、中学生の細かな心理描写や、言葉にできない感じなど、小説から始まったかのような雰囲気さえありました。それだけ漫画として表現の手段として、異例の仕上がりです。

春日と仲村の秘密や変態性は注目すべきポイントですが、張り合うように佐伯さんが混ざってくるところとか。なかなか想像できないストーリーに引き込まれましたね。

作者の押見先生の実体験も含んでいることを知った時は驚きました。特に仲村の存在は、奥さんがモデルとなっているとか。「お前はクズだ」や「クズ鉄」などと罵倒されるそうです(笑)

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